カレントテラピー 31-12 サンプル

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8 Current Therapy 2013 Vol.31 No.121198Ⅰ 機能性消化管障害1 概念機能性消化管障害(functional gastrointestinaldisorder:FGID)とは過敏性腸症候群(irritablebowel syndrome:IBS),functional dyspepsia(FD:機能性胃腸症,機能性ディスペプシア)を代表疾患とする,慢性の腹部愁訴があるにもかかわらず,それを説明するに足りる局所の器質的疾患,代謝性疾患などの全身疾患がみられない病態の総称である1).慢性の消化器症状で悩んでいる患者のほとんどはFGIDであり,その多くは実地医家を受診する.この病態,診断,治療に関する研究あるいは実践がこの四半世紀で急速に進展し,それをリードしてきたのがRome委員会といえる.2 疾患(障害)現在頻用されているのはRome Ⅲ基準(2006年公表)であり,FGIDは表1に示す疾患(障害)に分類(カテゴリー化)される2).3 定義・診断基準例えば,FDはRomeⅢで「胃・十二指腸領域に由来すると考えられる症状があり,症状を説明しうる器質的な疾患,あるいは全身性,代謝性の疾患がない症候群」と定義されている3).診断基準は各論を参照されたいが,FGID診断に共通する基準として「発症が6カ月以上前であり,症状が過去3カ月間は慢性・反復性に持続している」ことが挙げられる.この期間についてはRome基準でも変遷がみられる.FGIDには疾患特異的なバイオマーカー(生物学的指標)が見つかっておらず,症状・徴候の組み合わせからの症候学的診断といえる.したがって,その実臨床に即したFGID診断の留意点金子 宏*過敏性腸症候群,機能性ディスペプシアに代表される機能性消化管障害(functional gastrointestinaldisorder:FGID)は頻度が高く,主に第一線の実地医家が対応する疾患群である.中等症以上では生活の質が低下し,生産性にも影響する障害であるが,まだ医師の間での病名の認知度は必ずしも高くなく,的確に診断されていない場合が多い.主要消化器症状からFGIDを念頭に置いた費用対効果が高い現実的な診断が必要であり,Rome委員会からの診断基準,診断アルゴリズムを活用することは有用である.的確に診断することが患者に安心感を与え,良好な患者-医師関係構築にも役立つ.一方,心理社会的因子の関与や精神疾患の併存も多く,専門医へのコンサルトが必要な場合も少なくない.2013年6月に本邦で初めて機能性ディスペプシアを保険適用とする薬剤が上市された.診断,診断名,患者への説明で慢性胃炎との使い分けが必要となる.患者が悩んでいる機能性疾患の診断向上の好機ともいえる.* 星ヶ丘マタニティ病院副院長・内科部長機能性消化器疾患―あたらしい診療戦略