カレントテラピー 31-12 サンプル

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86 Current Therapy 2013 Vol.31 No.121276Ⅵ 抗コリン薬および漢方薬小腸と大腸の筋間神経叢の主要な興奮性神経伝達物質であるアセチルコリンは,ムスカリン受容体への結合を介して平滑筋細胞を収縮させる.抗コリン薬はムスカリン受容体を遮断することにより消化管運動亢進状態を改善させる.消化管運動亢進により引き起こされる下痢型IBS(IBS -D)に対して,メペンゾラート臭化物(トランコロンR),チキジウム臭化物(チアトンR)が保険適用となっている.また,前述のようにFDにおいて十二指腸を中心とした胃酸による刺激が関与している可能性を考慮すると,抗コリン作用による酸分泌抑制に加え,消化管運動抑制作用により十二指腸への胃酸の早期排出を改善することで胃酸関連症状の改善効果が期待できるのかもしれない.漢方薬である六君子湯は,FDを中心とした消化器疾患の不定愁訴を改善する薬剤としてよく知られている16).六君子湯は8つの生薬から構成され,そのうち人ニン参ジン,半ハン夏ゲ,甘カン草ゾウのなかには一酸化窒素(nitricoxide:NO)の基質であるL -アルギニンが含まれており,胃底部弛緩反応の最終の神経伝達物質であるNOを介した胃貯留能の改善効果が期待され,モルモット摘出胃を用いた検討から,胃貯留能を増大させることが証明されている3).また,構成生薬である陳チン皮ピに含まれるヘスペリジンに,5-HT3受容体の拮抗作用を介して胃排出能の促進作用があることが,NO合成酵素阻害薬投与によるラット胃排出遅延モデルでの改善効果から示されている17),18).Ⅶ おわりにFGIDの代表的疾患であるFD・IBSのサブタイプごとにどのような消化管運動異常が関与し,その消化管運動異常を改善させる消化管運動調整薬がどのように作用するのかについて概説した.実際の臨床においては,患者の問診から得られる諸症状などからFD・IBSの診断を行い,治療することとなる.ここで問題となるのがオーバラップ症例である.例えばFD患者ではPDS・心窩部痛症候群(epigastricpain syndrome:EPS)症状を同時に認めたり,患者の表現の違いにより明確にFDのサブタイプに当てはめることが困難な場合がある(一口に「胃もたれ」と訴えても,異なる患者では「胃痛」や嘔吐症状と表現されることもあり,自覚症状の表現はあいまいで個人差がある).また,FD・IBSのオーバラップも高率に認められており,インターネットを介した一般男性2万人を対象に行ったアンケート調査(Japan research of abdominal symptom for IBSⅡ:J-ROADⅡ)では,下痢型IBS(IBS-D)のオーバラップはFD該当者のうち45%に認められているとの報告もある19).オーバラップしている病態については明らかな原因は解明されていないが,治療薬の選択にあたっては同時に認められるFD・IBS症作用機序薬剤名効果が期待される疾患抗ドパミンD2薬メトクロプラミド(プリンペランR)ドンペリドン(ナウゼリンR)FD(PDS)FD(PDS)抗ドパミンD2・抗Ach-E薬イトプリド塩酸塩(ガナトンR) FD(PDS)セロトニン5-HT4受容体作動薬モサプリドクエン酸塩(ガスモチンR) FD(PDS)セロトニン5-HT3受容体拮抗薬ラモセトロン塩酸塩(イリボーR) IBS-DAch-E阻害薬アコチアミド塩酸塩(アコファイドR) FD(PDS)オピオイド受容体作動薬トリメブチンマレイン酸塩(セレキノンR) IBS・FD(PDS)抗コリン薬メペンゾラート臭化物(トランコロンR)チキジウム臭化物(チアトンR)ブチルスコポラミン臭化物(ブスコパンR)IBS-DIBS-DFD(EPS)?漢方薬六君子湯FD(PDS)表消化管運動調整薬の種類