カレントテラピー 31-12 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.12 831273Ⅰ はじめに機能性消化管障害(functional gastrointestinaldisorder:FGID)の代表的疾患として機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD),過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)が挙げられる.RomeⅢ基準において,両疾患はいくつかのサブタイプに分類される.FDのサブタイプとして,食後愁訴症候群(postprandial distress syndrome:PDS)と心窩部痛症候群(epigastric pain syndrome:EPS)に大別され,IBSのサブタイプとして便秘型(IBS-CC:constipation),下痢型(IBS-D D:diarrhea),混合型(IBS-M M:mixed),分類不能型(IBS-UU:unsubtyped)に分類される.胃酸と関連した消化管運動異常については,十二指腸に塩酸を灌流した臨床研究が報告されている1),2).これらの報告では,胃もたれや嘔気といった症状がみられ,胃底部弛緩反応を障害することで症状が誘発されると報告されている.このような病態に対しては胃酸分泌抑制薬の投与により症状の改善が期待できると考えられるが,一定の見解としては現在のところ示されていない.早期飽満感や胃もたれ感に対しては,消化管運動調整薬が良い適応と考えられている.PDSの主症状である早期飽満感は,胃の適応性弛緩障害が原因のひとつとして考えられている.胃の適応性弛緩反応とは,食事摂取により胃底部に食物が達すると,胃内容物による直接的な内壁伸展および内圧上昇に伴い圧受容器が刺激され,ある一定圧に達すると胃底部が弛緩しより多くの食物の受け入れを可能とする反応である.この反応の改善をターゲットとする薬FGIDに用いる消化管運動調整薬の薬効および作用機序中原憲一*1・富永和作*2・十河光栄*3・山上博一*3・谷川徹也*3・斯波将次*3・渡辺憲治*3・渡辺俊雄*2・藤原靖弘*2・荒川哲男*4*1 大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学*2 大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学准教授*3 大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学講師*4 大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学教授機能性消化器疾患―あたらしい診療戦略機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorder:FGID)の病態は,自律神経を介した脳腸相関(brain-gut axis)が関与するとされ,生理学的因子(消化管運動,内臓知覚,免疫,炎症)・心理社会的因子(ストレス・精神症状)に加え早期要因として遺伝や養育環境などが関与することが指摘されている.FGIDの代表的な疾患として機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD),過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)があるが,治療として食事指導・生活習慣改善,酸分泌抑制薬,消化管運動調節薬に加え,標準治療に抵抗する場合には向精神薬が用いられることもある.また,消化管運動調整薬は消化管運動異常に起因する症状に対し有効であると考えられている.両疾患に対し消化管運動調整薬の作用機序・特性を理解したうえで,疾患固有の消化管運動異常に適した薬剤を選択していく必要がある.a b s t r a c t