カレントテラピー 31-12 サンプル

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62 Current Therapy 2013 Vol.31 No.121252Ⅰ 心身症とは心身症は,「身体疾患の中で,その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう.ただし,神経症やうつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外する」と定義される1).「心理社会的因子」を心理と社会に分けて考えると,心理的因子としては,悩み,心配,不安,恐怖,依存,欲求不満,葛藤などがあり,社会的因子としては,家族関係,家庭生活での役割や環境の変化,学校生活での問題,社会生活での対人関係,職場での役割や責任,高齢化社会における喪失体験や生活状態の変化,生活習慣や生活様式の歪み,社会適応上の問題,などが挙げられる.心身症はそれらが複雑に絡み合って心理社会的因子となり,そこからストレスを感じ,身体的な症状が発生するというものである.身体におけるさまざまな器官において,上述の定義に当てはまるような心身症が存在する.例えば,消化器系においては,胃・十二指腸潰瘍,急性胃粘膜病変,慢性胃炎,機能性ディスペプシア(functionaldyspepsia:FD),過敏性腸症候群(irritable bowelsyndrome:IBS),潰瘍性大腸炎,心因性嘔吐,びまん性食道痙攣,食道アカラシア,呑気症などが挙げられる.このうち,FDとIBSは本稿のテーマである機能性消化管障害(functional gastrointestinaldisorders:FGID)の代表的な疾患である.Ⅱ ストレスストレスとは,心身の適応能力に課せられる要求(ストレッサー)とそれによって引き起こされる心身の緊張状態(ストレス反応)を包括的に表した概念である.1930年代にカナダの生理学者Selye2)が,「外界のあらゆる要求によってもたらされる身体の非特異的反応」を表す概念としてストレスを提唱した.生体に与えられた有害刺激は副腎皮質の肥大,心身症としてのFGIDと治療薬の使い方米田孝一*1・浅川明弘*2・乾 明夫*3心身症は発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる身体疾患である.機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders:FGID)の病態にはストレスと深い関わりがある.遺伝・環境を含む生育歴,心理社会的因子が関与して脳腸軸に異常をきたし,腸管運動機能異常,内臓知覚過敏が生じる.FGIDの治療においては身体症状のみならず,心理社会的因子,特にストレス,不安,抑うつなどにも目を向ける必要がある.そのうえで,薬物療法,心理療法を含む心身医学的なアプローチを進めていくことが重要である.*1 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学特任講師*2 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学准教授*3 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学教授機能性消化器疾患―あたらしい診療戦略