カレントテラピー 31-12 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.12 31代表的なFGIDへの対処法12213 食道過敏性・精神的要因の関与1)薬物療法テオフィリンがNCCP患者の疼痛閾値を上昇させると報告されており,食道過敏性を示した患者に対してクロスオーバー試験を行った検討でも,有意に症状を改善させたと報告されている16).ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドが健常人での食道のバルーン拡張刺激の閾値を上昇させると報告されているが,皮下注射製剤のみであるためにNCCPではあまり用いられていない.また,食道過敏性亢進や精神的要因の関与に対する治療として,種々の向精神薬の効果も報告されている.三環系抗うつ薬ではイミプラミンに関する二重盲検プラセボ比較試験が報告され,胸痛に対しての有用性が示されている17).また,retrospectiveな検討ではあるが,三環系抗うつ薬の長期成績でも73%の患者で症状改善を認めたと報告されている.トラゾドンをNEMDに使用した検討では,食道内圧所見は変化しなかったにもかかわらず,症状が改善したと報告されている18).選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selectiveserotonin reuptake inhibitors:SSRI)ではセルトラリンがプラセボと比較してNCCPを有意に改善させたと報告されている19).しかし,この検討では27%に副作用が認められている.一方で,NCCPにパロキセチンを投与した検討では,プラセボと差がなかったと報告されている20).セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenalinereuptake inhibitor:SNRI)ではvenlafaxineを使用した二重盲検プラセボコントロールクロスオーバー試験が実施されており,半数以上の機能性胸痛患者に有用であったが,半数以上に睡眠障害などの副作用がみられたと報告されている21).抗不安薬であるアルプラゾラムやクロナゼパムがNCCP患者に有用であったとの報告もあるが,ベンゾジアゼピン系薬剤は依存傾向が認められるため推奨されていない.また,セロトニンは内臓知覚や消化管運動に関与していると考えられているが,5-HT3受容体拮抗薬のオンダンセトロンがNCCP患者の食道の知覚閾値を上昇させたと報告されている.さらに,NCCP患者ではなく,機能性胸やけ患者での検討であるが,5-HT4受容体作動薬のtegaserodが食道の酸に対する化学受容器およびバルーン拡張に対する伸展受容器の感受性を低下させたとの報告もある.2)心理的介入精神的要因に関する治療では薬物療法のみならず,認知行動療法20)や催眠療法などの心理的介入の有用性が報告されており,半年にわたる長期成績でも症状の改善がみられたと報告されている.また,除霊が機能性胸痛に有用であったとの報告もある.Ⅴ おわりに本邦では機能性消化管疾患に対する認知度が低いため,NCCP患者に対して適切な診断および治療が行われていない可能性がある.NCCPの原因に関しては評価が難しく,さらに複数の要因が関与している.したがって,簡便で診断的治療も兼ねるPPIテストを行い,効果が認められない症例についてはより専門的な検査を行っていくことが推奨される.参考文献1)Fass R, Achem SR:Noncardiac chest pain:epidemiology,natural course and pathogenesis. J Neurogastroenterol Motil17:110-123, 20112)Katz PO, Dalton CB, Richter JE, et al:Esophageal testing ofpatients with noncardiac chest pain or dysphagia. Results ofthree years’ experience with 1161 patients. Ann Intern Med106:593-597, 19873)Cremonini F, Wise J, Moayyedi P, et al:Diagnostic and therapeuticuse of proton pump inhibitors in non-cardiac chestpain:a metaanalysis. Am J Gastroenterol 100:1226-1232,20054)Wang WH, Huang JQ, Zheng GF, et al:Is proton pumpinhibitor testing an effective approach to diagnose gastroesophagealreflux disease in patients with noncardiac chestpain?:a meta-analysis. Arch Intern Med 165:1222-1228,20055)Fass R, Achem SR:Noncardiac chest pain:diagnostic evaluation.Dis Esophagus 25:89-101, 20126)Kim BJ, Choi SC, Kim JJ, et al:Pathological bolus exposureplays a significant role in eliciting non-cardiac chest pain. JGastroenterol Hepatol 25:1855-1860, 20107)Kushnir VM, Prakash Gyawali C:High resolution manometrypatterns distinguish acid sensitivity in non-cardiac chestpain. Neurogastroenterol Motil 23:1066-1072, 20118)Balaban DH, Yamamoto Y, Liu J, et al:Sustained esophagealcontraction:a marker of esophageal chest pain identified byintraluminal ultrasonography. Gastroenterology 116:29-37,