カレントテラピー 31-12 サンプル page 16/34
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カレントテラピー 31-12 サンプル
30 Current Therapy 2013 Vol.31 No.121220いることが報告されている11).また食道のバルーン拡張を行った報告によると,NCCP患者ではバルーン拡張に対する食道の拡張能が低下していることが報告されており10),今後NCCP患者に対してもimpedanceplanimetryが行われるようになるかもしれない.4 精神的要因の関与NCCP患者の17~43%で精神的要因の関与が指摘されており,不安・うつ・神経質な素因・心気症などが報告されている.こうした精神的要因により,食道の痛み閾値が低下する可能性が考えられている.Ⅳ 食道由来の非心臓性胸痛の治療NCCPの原因解明については必ずしも容易ではないが,それぞれの原因および病態に応じた治療が望ましい.近年,NCCPの治療についてのレビューが発表されており,下記に紹介する12).1 胃食道逆流1)薬物治療胃食道逆流が原因であるNCCPに対しては,H2阻害薬とPPIの有用性が報告されている.特にPPIは胃食道逆流症における第一選択薬となっており,上記で示したようにPPI投与は診断的意味合いで投与されることも多いため,1~2週の短期間投与で症状の経過をみた検討もあり,胃食道逆流が関与しているNCCP患者におけるPPI投与の有用性が報告されている.こうした短期間投与の検討ではPPIの種類による効果の差異についても検討されているが,各種PPIで有効性に違いがみられず,どのPPIでも同様の効果が期待できる.また,NCCPにおけるPPI治療については二重盲検プラセボ比較試験が行われており,PPIがプラセボに比べて有意に症状を改善させたと報告されている13).この報告では4週間のPPI投与の効果が示されているが,NCCPに対するPPI投与の効果については4~8週間投与した報告が多い.ただし,長期成績については明らかとなっておらず,PPIの用量についても各検討でさまざまである.2)外科的治療胃食道逆流に関連するNCCP患者に対して逆流防止手術が有用であったとの報告が示されているが,手術を行うためには胃食道逆流の関連を十分評価し,関連性を証明する必要がある.基本的には胃食道逆流の関与が明らかで,薬物治療の効果が不十分な症例が対象になると思われる.2 食道運動障害1)薬物治療食道運動障害については有効な治療は確立されていないものの,硝酸剤,ホスホジエステラーゼ-5(PDE -5)阻害薬,抗コリン薬,カルシウム(Ca)拮抗薬などが使用されている.DESによる胸痛などには硝酸薬が用いられることがあるが,頭痛や血圧低下が出現し,使用しにくいケースも少なくない.PDE-5阻害薬であるシルデナフィルをNCCP患者に使用した研究では,食道運動障害を伴うNCCP患者に有用な症例があると報告されている14).抗コリン薬に関しては,nutcracker esophagus患者に投与したところ,下部食道の収縮波高と下部食道括約部静止圧が有意に低下したとの報告や,DESを伴うNCCP患者に抗コリン薬の吸入が有用であったとの報告がある.Ca拮抗薬に関しては,DESやnutcracker esophagusにニフェジピンが有用であると報告されている.また,ジルチアゼムもnutcracker esophagusに有用と報告されている.2)ボツリヌストキシン局注NCCPやDESなどの食道運動障害患者に対して,内視鏡下でのボツリヌストキシン局注の有効性が報告されている.短期成績では70%前後の患者で症状が改善するものの,一方では再局注が必要となる症例が多いとも報告されている.また,DESとnutcrackeresophagus患者に対して行われたボツリヌストキシンと生理食塩水の無作為化二重盲検クロスオーバー試験では,嚥下困難感や胸痛に対してボツリヌストキシン局注は生理食塩水に比べて有意に症状改善に有用であったと報告されている15).3)筋層切開術DESやnutcracker esophagusなどの症例では,筋層切開術が有効な症例もある.