カレントテラピー 31-12 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.12 29代表的なFGIDへの対処法1219ため,注意が必要である.2 食道運動障害1)食道内圧検査食道運動障害の診断では食道内圧検査がゴールドスタンダードとして行われている.上述のように,胃食道逆流の関与がないNCCP患者では約30%に食道運動障害を認めたと報告されている.実際に,われわれも夜間に施行した食道内圧検査でDESが出現し,胸痛が認められた症例を経験している.しかし,残念ながら食道内圧検査施行時に症状が認められることはまれであるため,検出された異常と胸痛との関連は明らかでないケースが多い.近年,高解像度食道内圧検査(high -resolutionmanometry:HRM)が開発され,より詳細に食道運動が評価できるようになった.また,HRMを用いたシカゴ分類が提唱され,より体系的に食道運動障害を診断できるようになった.Water perfused法によるHRMであるが,NCCP患者での一次蠕動波をHRMで分析した検討において,食道過敏性が認められた患者では下部食道の蠕動波の蠕動波高は胃食道逆流がみられた患者に比べて有意に高いことが示され,HRMを行うことにより食道過敏性が評価できる可能性が示されている7).2)薬剤誘発試験食道内に酸を注入して症状出現の有無を評価するBernstein testが以前より行われているが,診断感度はそれぞれの報告により7~60%と異なっている.Bernstein testに関しては,pHの値や注入スピード,注入時間などのプロトコールが標準化されていないことが,このような感度の違いを生じさせている原因かもしれない.薬剤誘発試験としては,エドロホニウムやエルゴノビン,ベタネコール,ペンタガストリンが使用されてきた.抗コリンエステラーゼ阻害薬であるエドロホニウムは重症筋無力症で使用される薬剤で,食道の収縮波高を増強させて胸痛を生じさせるものである.また冠動脈の径には影響を与えないため,食道由来の痛みを評価することができる.しかし,診断感度は20~30%と高くなく,あまり行われなくなっている.αアドレナリン作用と交感神経作用をもつエルゴノビンはNCCP患者の22~60%で胸痛を引き起こすが,健常人でも20%に胸痛がみられ,冠動脈攣縮や不整脈を引き起こす可能性があり,やはり行われなくなっている.コリン作動薬であるベタネコールは6~33%の患者で胸痛を引き起こすとされており,繰り返すと診断能が高まることが知られているが,副作用が強く,やはり行われなくなっている.ペンタガストリンは食道収縮波高を増強する作用があり,AchalasiaやDESの患者で胸痛を引き起こすことが報告されているが,NCCPの診断への有用性は明らかになっていない.3)その他食道の強収縮が認められても,必ずしも胸痛を訴えるとは限らない.上記のとおり,nutcracker esophagusと診断された症例でも,検査中に胸痛を訴える症例はまれである.また食道の収縮時に生じる胸痛に関しては,超音波内視鏡所見から食道縦走筋の過収縮が関与している症例が報告されており8),食道内の血流を測定した検討では食道縦走筋の過収縮に食道内の血流低下が関与している可能性も報告されている9).3 食道過敏性1)バルーン拡張食道過敏性の検査として,食道バルーン拡張が以前から行われてきたが,バルーン拡張による胸痛の誘発率は5~61%と報告により異なっている.バルーン拡張の方法については統一されたプロトコールがないため,各検討で拡張するバルーンの大きさや素材,拡張方法や拡張圧,拡張するスピードなどが異なっているために,こうした誘発率のばらつきが生じているものと思われる.なお,NCCP患者では食道過敏性亢進を反映して,バルーン拡張に対する閾値が健常人に比べて低いことも報告されている10).2)その他上記のほかに食道過敏性の評価として,食道の電気刺激やfunctional MRIを用いた検討,cerebral evokedpotentialsの検討などが報告されているものの,一般的には行われていない.また,近年食道の拡張能を調べる方法としてimpedance planimetryが開発され,好酸球性食道炎患者では食道拡張能が低下して