カレントテラピー 31-12 サンプル

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26 Current Therapy 2013 Vol.31 No.121216Ⅰ はじめに非心臓性胸痛(non-cardiac chest pain:NCCP)とは,虚血性心疾患に類似した胸痛が繰り返し生じるものの,虚血性心疾患などの心疾患が否定されたもので,神経筋疾患や肺疾患,消化管疾患,精神的疾患などが原因として考えられる(表)1).胸痛を訴える症例では,まず生命予後に関わり緊急の対応が必要な虚血性心疾患をはじめとする心疾患の除外が重要である.心疾患が除外された場合には,食道由来の胸痛も存在することを念頭に置く必要がある.ここでは食道由来の胸痛の原因,およびその診断・治療について述べる.Ⅱ 食道由来の非心臓性胸痛の原因食道由来の胸痛の二大原因は胃食道逆流と食道運動障害である.特に胃食道逆流に関しては食道由来のNCCPの最も一般的な原因であり,さらに有用な検査法があるだけでなく,有効な治療法もあることから,まず念頭に置くべきである.食道運動障害については,NCCP患者のおよそ30%で食道運動障害に異常が認められたと報告されており,nutcrackeresophagusやhypertensive lower esophageal sphincter,hypotensive lower esophageal sphincter,non-specific esophageal motor disorder(NEMD),びまん性食道痙縮(diffuse esophageal spasm:DES),Achalasiaなどが認められている(図)2).AchalasiaについてはNCCPの原因としてはまれで非心臓性胸痛(NCCP)の診断・治療への道栗林志行*1・草野元康*2非心臓性胸痛(non-cardiac chest pain:NCCP)の原因としてはさまざまな要因が考えられるが,食道由来の胸痛の二大要因は胃食道逆流と食道運動障害であるが,ほかにも食道過敏性亢進や精神的要因の関与も指摘されている.診断的治療としてプロトンポンプ阻害薬(proton pumpinhibitor:PPI)の有用性が示されており,PPIを投与しても症状が改善しない場合には,24時間食道内pH(・インピーダンス)モニタリングや食道内圧検査などによる評価が必要となる.治療においては,胃食道逆流が関与する症例ではPPIが診断的治療として第一選択薬となる.食道運動障害が認められた症例では,硝酸薬やカルシウム(Ca)拮抗薬,抗コリン薬が使用されている.また,びまん性食道痙縮(diffuse esophageal spasm:DES)やnutcracker esophagusなどの一部の食道運動障害では,ボツリヌストキシンの局所投与の有効性が報告されている.食道過敏性亢進や精神的要因が関与する症例では,向精神薬や認知行動療法の有用性が報告されている.*1 群馬大学医学部附属病院消化器内科助教*2 群馬大学医学部附属病院光学医療診療部臨床教授機能性消化器疾患―あたらしい診療戦略