カレントテラピー 31-12 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.12 13機能性消化管障害(FGID)の診断と病態1203が心配になってきた.FDはIBSも合併することが多いので13),図3に沿って診察を進めた.警告因子としては父親が大腸癌であること以外,問題はなかった(図3の1).また,1年前の定期健康診断での便潜血反応は陰性であったことを確認した.採血の結果,末梢血球数は正常でCRPも陰性であった(図3の2).IBS(下痢型)と診断し,整腸剤(プロバイオティクス)を投与した.なお,父親が大腸癌を患ったことを患者も気にしていたので,症状が酷くなった場合は大腸内視鏡検査を行うことを伝えた.診断:機能性ディスペプシア(PDS)とIBS(下痢型)の合併.3 深刻な心理社会的問題の把握方法FGIDでは不安,抑うつなどの心理的異常が併存することが少なくない.Rome委員会は臨床場面でのスクリーニングのために,心理社会的警報の質問票を公表している14).不安,うつ,自殺願望,疼痛重症度,障害,対処法,虐待に関する質問からなる(表2).より深刻な状況は「レッドフラッグ」とされ,専門家へのコンサルトの目安となる.Ⅳ FD診療での留意点特定疾患療養管理料は,生活習慣病などの厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者について,プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したものであり,許可病床数が200床未満の病院において月2回に限り算定できる(診療所:225点/回,病院:87・147点/回).厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に投薬した場合は長期投薬加算あるいは特定疾患処方管理加算が算定できる.消化管領域では胃・十二指腸潰瘍,胃炎・十二指腸炎が対象疾患であり,逆流性食道炎,FD,IBSは対象疾患ではない.FDの診断では上部消化管内視鏡検査などで症状を説明し得る胃癌などの悪性疾患を含む器質的疾患質問回答1.不安に関する質問:ここ1週間の間に,緊張している,あるいは「ぴりぴりしている」と感じたことはありますか?ほとんどいつも*・多くの時間・ときどき・まったくない2.うつに関する質問:ここ1週間の間に,落ち込んでいる,あるいは憂うつだと感じたことはありますか?ほとんどいつも*・多くの時間・ときどき・まったくない3.自殺願望に関する質問:最近落ち込んで自傷または自殺したい気になったことがありますか?しばしば*・ときどき・まったくない4.疼痛重症度に関する質問:ここ4週間の間に,どの程度の体の痛みを感じましたか?非常に重症・重症・中等度・軽症・なし5.障害に関する質問:ここ4週間の間に,疼痛のためにどの程度通常の生活(自宅外での仕事と家事の両方を含む)に支障をきたしましたか?ひどく・かなり・中等度に・わずかに・まったくない6.対処法に関する質問:痛み(もしくは他の症状)があるとき,「ひどい気分だ,きっと良くならない」と心の中で思います.つねに*・時には・一度もない7.虐待に関する質問:人生の一時期に精神的,身体的,性的に苦しめられることはよくあることで,この経験が病状への対処の仕方に影響することがあります.そういった経験をしたことがありますか?はい・一度もない表2機能性消化管障害における心理社会的警報の質問票*に回答した場合はレッドフラッグ状態と判定する.「より深刻」な状況であるため,医師は自分で対処する,もしくはFGIDの治療と同時に,あるいは治療前に精神医療の専門家に紹介するのが望ましい.〔参考文献14)より引用〕