カレントテラピー 31-11 サンプル

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8 Current Therapy 2013 Vol.31 No.111100Ⅰ はじめに頸動脈は動脈硬化の好発部位であり,体表に近く超音波による診断が可能のため,脳梗塞診療を行ううえで,評価を欠かすことのできない血管である.また超音波検査は非侵襲的に施行が可能なため,脳梗塞の原因となるような高度狭窄性病変以外にも,脳卒中の既往を有さない症例の軽度の内中膜複合体肥厚(intima-media complex thickness:IMT)や,プラークの診断が可能である.そのため全身動脈硬化の指標として,脳神経系診療科以外にも循環器内科,糖尿病代謝内科などで普及しており,一般住民健診,職場健康診断でも採用されつつある.頸動脈プラークの評価が普及した背景には,各種大規模臨床疫学研究で頸動脈プラーク,IMTが既知の危険因子とは独立して将来の心筋梗塞,脳卒中の予測因子であることが明らかにされた点が挙げられる.このため頸動脈プラークを指標とした各種薬剤の介入試験が報告され注目を集めてきた.しかし経時的な頸動脈プラークの進展,退縮と血管イベントの有無との間の明確な関連性は証明されていない.この点に注意しながら,頸動脈プラーク,IMTに関する臨床論文を解釈する必要があると思われる.Ⅱ 頸動脈プラークの評価,超音波診断頸動脈硬化の超音波診断は,IMT計測,プラーク個数,プラーク厚計測,狭窄率計測,プラーク性状診断に分けられる(図1)1).一般的なプラークの定義は厚さ1.1mm以上の限局性隆起病変とされている.IMTは,プラークの認められる部位ではその最大厚で評価し,プラークのない部分では内中膜複合体の一番厚い部分で評価される.最近の報告では,IMTはプラークを含めた測定値であることが多く,リスクマーカーとしての頸動脈プラークの意義北川一夫*頸動脈プラークは超音波により非侵襲的に評価が可能で,全身動脈硬化の指標として日常臨床,および健康診断において広く普及している.頸動脈プラークは,各種の動脈硬化危険因子と関連し,冠動脈,大動脈,頭蓋内動脈の動脈硬化とも相関し,将来の心筋梗塞,脳卒中の優れた予測因子であることが各種疫学研究から示されてきている.またスタチンをはじめとした各種薬剤において動脈硬化退縮,進展抑制作用があることが報告されている.しかし経時的な頸動脈プラーク進展や,退縮と血管イベントとの関連は明らかでない.動脈硬化の危険因子をひとつ以上有する中年期以後の症例では,頸動脈硬化の評価を行うことが心血管イベントハイリスク患者の選別のために推奨される.* 大阪大学大学院医学系研究科神経内科学准教授/大阪大学医学部附属病院脳卒中センター副センター長頸動脈プラークのリスクと対応―プラークの質的診断と適切な治療戦略