カレントテラピー 31-11 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.11 71099頸動脈プラークのリスクと対応― プラークの質的診断と適切な治療戦略―企画東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授小室一成生活習慣が欧米化し,急速に高齢化社会を迎えているわが国において,動脈硬化性疾患の重要性は増すばかりである.当然動脈硬化の程度を正確に評価することが重要であるが,一昔前,動脈硬化は,動脈の石灰化や眼底における動脈の硬化度から推測することしかできなかった.最近になり,脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity:PWV)や心臓足首血管指数(Cardio Ankle VascularIndex:CAVI)など,動脈の性状(硬さ)を測定する方法が普及してきたが,血管超音波により頸動脈内膜中膜複合体厚(intima-media thickness:IMT)やプラークといった動脈の形態を評価することも全身の動脈硬化の判定に有用である.頸動脈プラークは,各種の動脈硬化危険因子と関連し,冠動脈,大動脈,頭蓋内動脈の動脈硬化とも相関する.さらに将来の心筋梗塞や脳卒中といった重大な心血管イベントの優れた予測因子となることが多くの疫学研究から明らかになっている.頸動脈プラークを観察するもう一つの目的は,脳梗塞のリスク評価である.最近わが国では糖尿病患者が急増していることもあり,狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の発症が増えている.しかし,いまだ脳卒中の発症数が心筋梗塞の発症数よりも多いのが,わが国の特徴といえよう.脳卒中において,血圧コントロールの改善により脳出血やラクナ梗塞が減り,かわって糖尿病や脂質異常症の増加,さらには高齢化により,アテローム性脳梗塞と心原性脳梗塞の頻度が増している.アテローム性脳梗塞の原因となるのが,頸動脈狭窄やプラークであり,その評価がきわめて重要となる.頸動脈プラークの評価には,その簡便さから,頸動脈超音波が頻用されているが,そのプラークが,脳梗塞を起こしやすいか否かといった質的評価には,CTやMRI,PETなどが有用である.また頸動脈プラークは,一過性黒内障,一過性脳虚血発作や脳梗塞の原因になるため,適切な治療が必要である.プラークが大きく,頸動脈の狭窄が高度な症例,不安定プラークを有する症例,脳虚血を有する症例では,頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)や頸動脈ステント留置術(carotid artery stenting:CAS)の適応となる.冠動脈治療と同様に,外科的治療に比べて,ステントによる治療が急増しているが,治療法の選択は,年齢,全身状態,既往のみならず,プラークの性状や大きさ,血管の構築を考慮して決定される.脳卒中の多いわが国においては,頸動脈プラークはとりわけ重要な意味をもつが,本特集のように診断から治療まで最新の成果を網羅した企画は少ない.本特集が,わが国における脳卒中の予防に大いに役立つことを期待したい.エディトリアル