カレントテラピー 31-11 サンプル

カレントテラピー 31-11 サンプル page 24/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 31-11 サンプル の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 31-11 サンプル

66 Current Therapy 2013 Vol.31 No.111158ラセボ群に対して有意に脳卒中再発を抑制することを示した9).つまり,血清LDL -Cの上昇は脳卒中のリスクとなっているとは限らないが,低下させることはいくぶんかのリスク低減につながるということである.脳卒中の場合,冠動脈の場合ほど血清LDL -Cがリスクに直結し,また低下させることでリスクが明確に下がるわけではないのは,脳卒中にはいくつかの病型があり,必ずしもすべてにおいて粥状動脈硬化病変がその原因となっていないためだと推測される.粥状動脈硬化病変が脳梗塞と関連している病態として,頸動脈の動脈硬化進展に伴う狭窄が考えられているが10),11),近年は冠動脈の場合と同じく,必ずしも狭窄度ではなく不安定プラークがリスクと関連しているのではないかということが示唆されている12).Ⅱ 頸動脈病変に対する治療『脳卒中治療ガイドライン2009』によると慢性期における症候性の頸動脈高度狭窄に対する治療として現在では最良の内科的治療を行ったうえで頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)を行うことが推奨されている(表1).ただし,CEAが適応にならない場合(表2)1)においては頸動脈ステント留置術(carotid artery stenting:CAS)が推奨となる(表3).また中等度狭窄でも症候性であったり,無症候性でも高度狭窄がある場合はエビデンスグレードは下がるがCEAを行うことが推奨されている(表1).ただし,ガイドラインにも記されているように現時点では症候性頸動脈軽度狭窄や無症候性中等度ないし軽度狭窄において,こうした治療を行うべきかについては十分なエビデンスがない.Ⅲ 頸動脈プラークの評価方法頸動脈は体表から近いためにエコーによる評価が行いやすい.そのため近年は動脈硬化スクリーニングとして頸動脈エコーが頻繁に行われており,狭窄の有無,内皮中膜複合体壁厚(intima -mediathickness:IMT)やプラークの有無・性状が評価されている.一方,動脈硬化プラークには心血管イベントの起こしやすさの違いがあり,いわゆる不安定プラークとよばれるプラークが破綻し,血栓・塞栓症を起こすと考えられている.こうしたプラーク推 奨1.症候性頸動脈高度狭窄(>70%,NASCET法)では,抗血小板療法を含む最良の内科的治療に加えて,手術および周術期管理に熟達した術者と施設において頸動脈内膜剥離術を行うことが推奨される(グレードA).2.症候性頸動脈中等度狭窄では,抗血小板療法を含む最良の内科的治療に加えて,手術および周術期管理に熟達した術者と施設において頸動脈内膜剥離術を行うことが推奨される(グレードB).3.無症候性頸動脈高度狭窄では,抗血小板療法を含む最良の内科的治療に加えて,手術および周術期管理に熟達した術者と施設において頸動脈内膜剥離術を行うことが推奨される(グレードB).4.症候性頸動脈軽度狭窄あるいは無症候性中等度ないし軽度狭窄において,頸動脈プラークの不安定化や潰瘍形成が認められる場合は,頸動脈内膜剥離術を行うことは考慮しても良いが,それを行うことに十分な科学的根拠はない(グレードC1). 表1慢性期におけるCEAの推奨表2 SAPPHIRE研究で規定されたCEA危険因子(少なくとも1つが該当)・ 心臓疾患(うっ血性心不全,冠動脈疾患,開胸手術が必要,など)・重篤な呼吸器疾患・対側頸動脈閉塞・対側喉頭神経麻痺・頸部直達手術,または頸部放射線治療の既往・CEA再狭窄例・80歳以上〔参考文献1)より引用改変〕