カレントテラピー 31-11 サンプル page 23/32
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カレントテラピー 31-11 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.11 651157Ⅰ はじめにスタチンは血清LDLコレステロール(LDL -C)を低下させること,ならびにpleiotropic effectsを通じて動脈硬化の進展の予防,さらに心血管イベントの抑制に寄与すると一般に理解されている.しかし個々の動脈床についてみた場合,必ずしも同一の効果があるわけではないことも知られている.冠動脈についてはこれまでスタチンがプラークを退縮させたり,安定化させたりして1),ひいては冠動脈イベントを減らすこと2),3)が示されている.他方では,動脈硬化性末梢動脈疾患においてスタチンが下肢虚血を改善するという明確なエビデンスは現時点ではない4).また,大動脈瘤についても同様にスタチンが大動脈径の拡大進展を抑制するというエビデンスはない5).血清LDL -Cレベルと脳卒中の発生リスクについて,疫学研究からは明確な関連が発見されてこなかった6).約100万人を対象とした最近のメタ解析でも総コレステロール濃度と致死的心筋梗塞の間には明確な関係を認めたものの,やはり致死的脳卒中との間ではそうした関係を見出すことができなかった.ただし,年齢を70歳未満,70歳以上で分けると,70歳未満では総コレステロール濃度と致死的脳梗塞との間に関係が認められた7).一方でスタチンで血清LDL -Cを低下させることにより脳梗塞が減らせることはcholesterol treatment trialists(CTT)のメタ解析で示されている8).また,登録前1カ月から半年前の間に脳卒中または一過性脳虚血発作(transientischemic attack:TIA)を起こし,LDL-C値が100~190mg/dLの患者に対してアトルバスタチン80mg群もしくはプラセボ群にランダムに割り付けたSPARCL試験では,アトルバスタチン80mg群でプ頸動脈プラークに対するスタチン治療興梠貴英** 自治医科大学企画経営部医療情報部准教授頸動脈プラークのリスクと対応―プラークの質的診断と適切な治療戦略意外なことに,高LDLコレステロール血症が脳卒中のリスクであることを示す疫学データはほとんどない.しかし,スタチンを用いたさまざまな介入試験のサブ解析ならびにそれらのメタ解析によってスタチンが脳卒中リスクを減らし得ることが示されてきた.その機序のひとつとして,頸動脈不安定プラークの安定化,プラーク退縮による血栓・塞栓症予防が考えられる.頸動脈プラークの評価法にはエコー,CT,MRIが用いられ,それぞれに長所・短所があるが,最近の研究でスタチン治療により最短で30日でプラーク性状の改善が認められることが示されている.ただし,頸動脈プラークのスタチンによる治療の最終目的は脳卒中の予防であるため,適応があれば頸動脈内膜剥離術などの侵襲的治療を選択する必要があり,より軽症の症例でスタチン治療がどれだけのベネフィットをもたらすのかを明らかにするには今後の研究が必要である.a b s t r a c t