カレントテラピー 31-11 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.11 63代替療法1155介した機序により,石灰化を抑制することも報告されている.Ⅴ レスベラトロールの動物に対する効果動脈硬化モデル動物としてApoE(-/-)ノックアウトマウスを使った報告が多い.例えば,ApoEノックアウトマウスにレスベラトロール混餌食(0.02%w/w,0.06%w/w)を20週間投与すると動脈硬化性変化が抑制され,血清総コレステロール,LDLコレステロール,中性脂肪が減少したという報告もある.またレスベラトロール(9.6mg/kg,96mg/kg)を8週間,高脂肪食ApoE(-/-)LDL受容体(-/-)ダブルノックアウトマウスに与えると約30%動脈硬化巣が退縮したといった報告もある.血管内皮細胞の老化はひとつの動脈硬化のリスクファクターであることがわかっている.われわれの検討では,ストレプトゾトシン(streptozotocin:STZ)糖尿病マウスに対して,メリンジョ(Gnetumgnemon L.;インドネシアで食用されている豆類で,トランスレスベラトロールやレスベラトロール2量体を豊富に含有することがわかっている食品)の混餌食を3週間投与すると血管内皮細胞老化が抑制されることもわかった10).Ⅵ レスベラトロールの生体に対する作用レスベラトロール内服による人間に対する効果について,残念ながら明快な答えは得られていない.臨床研究についても大規模な長期にわたる検討はなく,これからの課題である.レスベラトロールを多く含む赤ワインや葡萄ジュースに関する効果も,レスベラトロールによる特異的な作用かどうかは明確になっていない.ただし,赤ワインを適量飲むほうが,ビールやリキュールを飲むより心血管疾患のリスクが低いといった疫学研究や,1週間に1~6杯までの少量のアルコール消費が心血管疾患を減らし,1週間に14杯以上大量に飲酒すると増加させるといった報告もある.レスベラトロールは経口摂取されると吸収は早く,約30~60分で最大血中濃度に達する.肝シトクロームp450により代謝されると考えられており,半減期は約8~14分と推測されている.大半がグルクロン酸抱合または硫酸抱合体となって血中を流れていき,尿中に排泄される.レスベラトロールの服用量については,その効能を期待する疾患により異なると考えられる.2型糖尿病患者に対して2.5gまたは5.0g/日で28日間投与すると,食前食後血糖値や食後インスリン値が改善したといった報告もある.また250mgないしは500mg摂取後,45分以降で濃度依存的に前頭葉の血流の亢進が認められたという報告もある.またflow -mediated dilation(FMD)による血流増加は,30mg/日の投与で認められたという報告もある.レスベラトロールによる重大な副作用は現時点では報告されていない.動物モデルでも,300mg/kgという高用量を投与しても明らかな副作用はみられていないようである.ただし,副作用については,2.0gレスベラトロールを1日2回投与で8人中6人に一過性の下痢,また1人に皮疹や頭痛を認めたという報告もある.また細胞実験で,レスベラトロールは血小板の凝集を抑制したという報告もあるため,抗凝固薬であるヘパリンやワルファリン,または抗血小板薬であるアスピリンとの併用による出血のリスクについては考慮する必要があると思われる.またシトクロームp450により代謝されるので,スタチン,カルシウム拮抗薬,またはアミオダロンのような抗不整脈薬との併用は注意が必要と考えられる.いままでの臨床結果はすべて小規模な臨床研究もしくは大半が動物実験の結果であり,未知の副作用の存在は否定できない.レスベラトロールに効果を期待して服用するのは,十分に注意が必要であろうと思われる.