カレントテラピー 31-11 サンプル page 19/32
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カレントテラピー 31-11 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.11 611153より注目を集めている物質のひとつであり,アンチ・エイジング作用ばかりでなく,動脈硬化抑制作用,抗炎症効果,糖尿病改善,感染症抑制効果や抗癌作用などが報告されている.Ⅱ レスベラトロールの主な作用レスベラトロールの主な作用は,抗酸化作用や抗炎症作用である.レスベラトロールは抗酸化物質として作用することが多数報告されている.動脈硬化の主な原因である,酸化LDLの産生も抑制するが,また酸化LDLによって産生される活性酸素をも阻害し,主に細胞に対して保護的に作用すると考えられている.主な酸化ストレスに対する保護メカニズムとしては,抗酸化酵素であるsuperoxide dismutase(SOD),カタラーゼ(catalase),グルタチオンペロキシダーゼ(glutathione peroxidase)やグルタチオンレダクターゼ(glutathione reductase)等の活性を上げ,また逆に,活性酸素を生成するミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase),キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase),ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸(nicotinamide adeninedinucleotide phosphate:NADPH)オキシダーゼ等を阻害することも報告されている.また,レスベラトロールによる抗炎症作用についても多数の報告がある.動脈硬化にとって,炎症反応は増悪因子のひとつとして重要である.レスベラトロールはインターロイキン(IL)-1,IL -2,IL -12,IL -18やインターフェロンγ,また腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)-αの産生をも抑制すると報告されている.またnuclear factor(NF)-κBやプロテイン-1の反応も減弱させ,動脈硬化を抑制する.さらにレスベラトロールはMCP -1による単球の遊走も抑制するといった報告もある.レスベラトロールは血管平滑筋細胞の増殖をも抑制する.レスベラトロール処理によりG1/S細胞周期増殖停止が血管平滑筋細胞でみられる.低濃度による処理で増殖抑制がかかるが,高濃度処理をすると細胞死を招くこともわかっている.さらに,レスベラトロールは血小板凝集も抑制して,動脈硬化の進行を抑制する.Ⅲ レスベラトロールとSirt1以上より,レスベラトロールは動脈硬化を抑制する効果を有しているが,どういった分子がその抑制に関与するのであろうか.その代表的な分子のひとつがサーチュイン(Sirtuin)遺伝子であると考えられる.レスベラトロールは長寿遺伝子と考えられるサーチュイン遺伝子を活性化すると報告され2) ,それ以降,レスベラトロールはサーチュイン遺伝子の活性化剤として多くの実験,研究で用いられるようになった.また,レスベラトロールよりも数千倍サーチュイン遺伝子を活性化する薬剤も開発され,2型糖尿病の治療薬として期待されている.しかしながら近年,レスベラトロールによるサーチュイン遺伝子の直接的活性化作用は否定されてしまった.つまり,サーチュイン遺伝子の活性化測定方法に問題があり,検査によるアーチファクトにすぎないというものであった3).ところが興味深いことに,2013年Hubbardらにより,レスベラトロールのSirt1直接的活性化メカニズムが詳細に明らかにされた4).問題があった上記の測定方法を改良し,レスベラトロールはアロステリックにSirt1と直接結合し,活性化させることを報告した.また,活性化にはSirt1のカタリティックドメインのN末端側にある230番目のリジン残基が重要であることが明確にされた5).そもそも酵母Sir2 とは,線虫やショウジョウバエのような下等動物ばかりでなく,哺乳類のような高等動物に至るまで進化論的に保存されている遺伝子である.その哺乳類ホモログとして,7種類のサーチュインファミリーが存在し,Sirt1 からSirt7 まで同定されている.それぞれ7種類,酵素活性や細胞内の局在,またN,C末端の配列が異なり,酵素活性作用も異なっている.最も酵母Sir2 と構造や機能が類似しているのがSirt1 である.酵母Sir2 は,カロ