カレントテラピー 31-11 サンプル

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60 Current Therapy 2013 Vol.31 No.111152Ⅰ レスベラトロールとはレスベラトロール(3, 5, 4' -trihydroxy -trans -stilbene)は,スチルベノイドの一種である.葡萄や赤ワイン,ピーナッツ等に多く含まれており,天然ポリフェノールの一種として知られる.1939年に北海道帝国大学の高岡道夫先生が,植物バイケイソウ(Veratrum album )から初めて単離したものである(図1).レスベラトロールには2つの異性体が存在する(シス型/トランス型).また2量体や4量体の多量体も存在し,それらはレスベラトロール類と総称される.主に効果が解明されてきているものは,単量体のトランスレスベラトロールである.1992年にLancet誌において,喫煙,運動不足,脂肪摂取過多にもかかわらず,適度なワインを飲酒しているフランス人のほうが,心血管疾患になるリスクが減少することが報告されて以来,いわゆる“フレンチ・パラドックス”とよばれ注目されるようになった1).赤ワインには,使われている葡萄の種類にもよるが,レスベラトロールが約0.2~5.8mg/L含まれており,白ワインには,約0.1~2.1mg/L含まれている.レスベラトロールは近年のアンチ・エイジングブームにレスベラトロールと動脈硬化大田秀隆*1・飯島勝矢*2レスベラトロール(3, 5, 4'-trihydroxy-trans-stilbene)は近年のアンチ・エイジングブームにより注目を集めている物質のひとつである.レスベラトロールはスチルベノイドの一種で,葡萄や赤ワイン,ピーナッツなどに多く含まれており,またいわゆるフレンチ・パラドックスたる心血管疾患の予防保護効果に関する報告も多数ある.レスベラトロールの主な作用は,抗酸化作用,抗炎症作用など多岐にわたるが,そのメカニズムは不明な点が多い.さらに,長寿遺伝子といわれているSIRT1活性化作用があることが報告されて以来,その作用はSIRT1によるところが多いとも考えられている.しかしながら,それだけでは説明できない作用も多分にあり,今後詳細な検討が必要である.レスベラトロールの効果については,癌,認知症や糖尿病など多数の疾患にわたって検証されているが,今回は,動脈硬化を中心に,レスベラトロールの作用やSIRT1を中心にしたメカニズム,また動物モデルや生体内に対する作用などについて述べる.*1 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座助教*2 東京大学高齢社会総合研究機構准教授頸動脈プラークのリスクと対応―プラークの質的診断と適切な治療戦略HOHOOH図1 トランスレスベラトロールの化学構造