カレントテラピー 31-11 サンプル

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16 Current Therapy 2013 Vol.31 No.111108これは狭窄後の波形が乱流パターンを取ることや,B -modeやカラードプラ上できわめて狭窄が高度であることを確認しておけば見落とすことはない.また60%や80%など,細かい狭窄率の基準値はあまり示されておらず,総頸動脈の狭窄にも適応はされない.ECST法に関しては,超音波検査では元の血管径が見えるのでむしろ血管撮影より正確に狭窄率を計測可能と考えられる.しかしNASCET法とECST法にも微妙なずれが生じることがわかっており,血行再建を決定する基準はほとんどの施設がNASCET法を採用し,日本では頸動脈のみで血行再建を決定する施設もほぼないと考えられるので,狭窄率の評価に関して頸動脈超音波検査はあくまでスクリーニング目的で行うものと理解しておくべきであると考える.頸動脈狭窄症と診断されたときの対応であるが,これまでガイドラインなどで明確に推奨されているのは狭窄率を基準としたものだけであり,日常診療で参考としているものは,狭窄の進展,プラークの性状である.狭窄の進展が脳梗塞の発症リスクとなることはいくつかの報告があるが,対策としてはリスク管理の徹底,抗血小板薬の変更,血行再建術の考慮などが考えられる.リスク管理に関してはbestmedical treatmentにより,無症候性の頸動脈狭窄病変は年間のイベント発生率を0.5%程度にまで抑えることができたという論文が発表され注目を集めている5).今後は特に無症候性頸動脈狭窄症に関してはプラーク性状などからリスクの層別化をはかり,内科治療を強力に行うか血行再建をするのかという治療戦略の判断材料に用いることができるようになることが期待されている.頸動脈超音波検査でのプラーク性状評価については,プラーク輝度,表面性状,均一性,可動性などが指標として用いられている.プラーク輝度に関しては,一般的には低輝度,等輝度,高輝度の3種類に分けられ,低輝度は血液に近い輝度,等輝度は内中膜や筋肉に近い輝度,高輝度は骨に近い輝度とされ,低輝度なものは粥腫や血腫,等輝度は線維成分,高輝度は石灰化に相当するとされている(図2).したがって低輝度プラークが最も脆弱と考えられる.表面性状は平滑,不整,潰瘍に分類されるが,定義は曖昧なところがある.表面性状の不整や潰瘍の存在が脳梗塞の発症に関連するという報告があるが大規模なデータはない.均一性に関しても定義は曖昧で,輝度が不均一なものが症候性プラークに多いという報告があるが一報のみである.可動性に関しては超音波検査でしか評価できないものであり,症候性の病変に関しては治療抵抗性であるとの報告があるが,頻度について多数例で調査されたものはない(図3).頸動脈超音波検査によるプラークの性状診断における大きな問題点は,ほとんどの指標が定量化されていないということである.輝度分類も一般的には見た目で行われている.これまで定量化の試みとして,gray scale medianやintegrated backscatterなどを用いた評価が報告されているが,現時点ではデータ低輝度等輝度高輝度図2 頸動脈エコーによる輝度の分類