カレントテラピー 31-11 サンプル

カレントテラピー 31-11 サンプル page 12/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 31-11 サンプル の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 31-11 サンプル

Current Therapy 2013 Vol.31 No.11 151107日本人の正常値としてはHommaら3)の報告が有名であるが,年齢別の正常値を基にIMTの病的意義について報告されたものはないので,疫学研究などを基に病的意義を考慮するのが現実的と思われる.当センター予防検診部の報告では,1.4mm以上になると独立した心血管疾患発症の予測因子になるとしている.IMTの肥厚とプラークの区別は困難な場合もあるが,基本的には限局的な隆起をプラークとしている.2014年には日本超音波医学会でガイドラインの改訂が行われる予定である.IMTの肥厚や50%以上の狭窄を伴わないプラークに対する対策は,まずリスクファクターの管理を行い,他の循環器疾患,特に冠動脈疾患の有無について注意を払う必要がある.狭窄率に関しては種々の算出法があり,日本の超音波検査では面積狭窄率が最も普及している.これ以外には頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)の大規模国際研究のために提唱された,NorthAmerican Symptomatic Carotid EndarterectomyTrial(NASCET)法,European Carotid SurgeryTrial(ECST)法がある.これらの計測法を図1に示すが,同じ狭窄部を計測しても計測法により数値はかなり異なる.それぞれ一長一短があり,面積狭窄率は短軸で計測するために狭窄部が偏心性であったり,不正形であっても正しく計測できる.しかし径で計測した方法と直接数値で比較するとかなり高値に出ることと,分岐部などのもともとの血管径が太い部分では内腔がそれほど細くなくても高値となり,過大評価の傾向となる.また面積狭窄率を用いた大規模研究のデータがないため,現時点で予後や治療選択の基準とならない.ある程度大きなプラークがあるという指標であり,スクリーニングに用いることは意義があると考えられる.一方,NASCET法は血行再建術の適応の決定に最も広く用いられている計測法であるが,もともと血管撮影からの計測法であり,分母に内頸動脈遠位部の径が用いられる.しかし頸動脈エコーで内頸動脈遠位部の径を正確に計測することは困難であり誤差も大きい.これまで頸動脈超音波検査で世界的に用いられている最も標準的なNASCET法での狭窄率の評価は,狭窄直後の最大収縮期血流速度(peak systolic velocity:PSV)である.日本ではPSVが200cm/sec以上のとき,狭窄率はNASCET法で70%以上という指標が広く普及しているが,欧米のメタアナリシスでも200cm/secが感度・特異度ともに高く,日本の基準と一致する4).一方,50%狭窄に関しては先ほどのメタアナリシスからは130cm/secが妥当と考えられる.PSVで気をつけておかなければならない点は,90%以上のようなきわめて狭窄が進行している例では,狭窄の進行とともにかえってPSVが低下してくる点であるが,内頸動脈外頸動脈総頸動脈BA面積狭窄率:area B-area Aarea BNASCET:ECST:×100%×100%×100%b-abc-acbac図1頸動脈狭窄率の計測法