カレントテラピー 31-11 サンプル

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14 Current Therapy 2013 Vol.31 No.111106Ⅰ はじめに30年前までは日本人にはほとんど頸動脈病変が存在しないとされてきたが,この30年間に生活習慣が大きく変化し,日本人でも頸動脈病変が当たり前のように見つかるようになってきた.疫学的には都市部での頸動脈病変のほうが頻度は高いとされているが1),今後さらに全国的に増加してゆくことが予想される.頸動脈病変のスクリーニングには超音波検査が最も感度が高く,簡便で,無侵襲であることから優れている.その後,MR検査やCT検査の進歩により,いろいろなモダリティーを用いて質的診断も試みられている.頸動脈病変は高度狭窄となると直接脳梗塞の原因となるが,軽度であっても全身の動脈硬化を代表するサロゲートマーカーとしての役割も大きい2).本稿では頸動脈プラークの代表的な診断法である,超音波検査,MR,CTから得られる情報についてその役割を解説し,リスクとの関連,対策,質的診断と治療方針について述べたい.Ⅱ 超音波検査法1 頸動脈超音波検査頸部超音波検査は解像度が0.1mmと非常に高いこと,簡便で無侵襲であるため繰り返し施行することが可能であること,リアルタイムな動きも見ることができること,などが大きな長所である.頸動脈超音波検査でないと評価のできない大きな項目として挙げられるのは,ごく初期の動脈硬化の指標となる内中膜厚(intima media thickness:IMT)の肥厚や小さなプラークの評価である.IMTの正常値は年齢とともに上昇すると考えられているが,頸動脈プラークの評価法長束一行*頸動脈病変は今後ますます増加すると考えられており,早期からのスクリーニングには頸動脈超音波検査が最も適している.症候性の頸動脈病変では狭窄がNorth American SymptomaticCarotid Endarterectomy(NASCET)法で70%を超えれば血行再建術の適応を考慮するが,その際には頸動脈超音波検査,MR,CTそれぞれの長所を活かした画像診断を組み合わせ,頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)か血管内治療が適しているのかを判断する.また無症候性の頸動脈病変に関しては,まずbest medical treatmentを行い,狭窄の進行に関する経時的な観察には超音波検査を主に用いてプラークの性状診断にはMRやCTを組み合わせて評価することが勧められる.しかしこれらの評価が将来の脳梗塞発症をどの程度予測できるかについてはまだ十分な証拠は少なく,今後のデータの蓄積が必要である.* 国立循環器病研究センター病院脳神経内科部長頸動脈プラークのリスクと対応―プラークの質的診断と適切な治療戦略