カレントテラピー 31-10 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.10 67代替療法1064色々な業種・色々な食品での経験は,沢山の対処法を生み出した.舌の記憶は「この変な味」に出会ったときにはどちらの方向に進めばよいかを教えてくれる.そして「美味しい減塩のための方程式」と「ブラッシュアップするためのノウハウ」の2つに棲み分けられ減塩技術ができあがったのである.個人の食経験によって左右されやすいファジーな尺度である「美味しい」ではなく,通常品と区別のつかないような「美味しい減塩」は第三者評価が可能であり,異業種間でも共有できる技術に成長したのである.また,減塩技術の向上において忘れてはならないことがある.それは高いハードルの減塩品質への挑戦であり,老舗の外食ラーメンチェーンにおけるラーメンの減塩化であった.ラーメン店に来られるいつものお客様はいつもの味を求めてお店に来るため,味が少しでも変わってしまうとお客様からお叱りを受ける.そのため家庭用の減塩食品よりもっと厳格な同等性が求められる.この高いハードルへの挑戦は全く新しい角度からの素材を利用する技術を生み出した.例えば,あるポリフェノール含有原料は,γ-ポリグルタミン酸と共存すると脂肪様の官能をつくる.それは減塩品質を補完することができる.しかし何よりも大切なことは,そもそもカリウムを多く含む食品である牛乳や果実や昆布は不味いのか? 自然の摂理のなかにも答えがある.Ⅴ 減塩食品の課題と今後の展望これまで述べた減塩技術により,通常品と区別のつかないような品質の減塩食品(「美味しい減塩食品」)ができるようになってきた.しかしながら「美味しい減塩食品」が開発できても,世の中に送り出すときには,以下のような課題が山積みとなっている.① 減塩食品は高い?→ 減塩食品は安価な原料である食塩を減らすため原料コストが上昇する.そして生産量も少ない場合には製造コストも高くなる.② 減塩は不味いイメージのまま?→ 「減塩は不味い」というイメージが払拭できていない.過去の減塩食品の品質や個人の料理体験がバックグラウンドにあり,根の深い問題となっている.③ 減塩食品は簡単に店頭に並ばない?→ スーパーなどの売り場では同種の取扱品種の拡大は非効率であり,通常品を売れるかどうかわからない減塩品に切り替えたり,追加したりするのは敬遠される.もちろんインパクトのある情報が社会的に伝わった場合はその限りではない.その他にも色々な課題がある.例えば通常品を全面的に減塩化した場合は,対照品がなくなることにより減塩と呼べなくなってしまう.これは減塩運動を推進していく中では最も歓迎すべき行為であるのに救済されないのである.また,減塩食品においては関心の高い栄養成分であるナトリウム(食塩相当量)やカリウムは製品パッケージやホームページなどで情報公開されるべきであるが,法規制はなく,各社の判断に頼っているのが実情である.そして一番大きな課題は「食事としての減塩化」である.一つや二つの企業が減塩食品の大切さを唱えても目的は達成されない.例えば減塩のうどんが発売されたとする.しかしうどんスープの減塩品がなければうどんメニューとしては完全ではないということだ.家庭での出現頻度が高く,塩分の高い多種の調味料や加工食品が減塩化を推進してこそ日本人の減塩化が進む.しかしながら,今立ち上がった企業も減塩品が売れなければ体力がもたず終売に追い込まれてしまう.ようやくさまざまな分野での減塩食品が登場してきた.今こそ,減塩運動を加速させるべきと思う.減塩食品が到達している品質レベルと導入時の課題をご理解いただき,医師・行政・流通・メディアの皆様のお力添えをいただきながら,日本人の健康寿命を延ばすことに貢献できればと思う.また,減塩食品は高血圧の方々に利用していただくだけでなく,健康な方が高血圧などの予防に役立てていただくことも大切である.今までと変わらぬ使い方で,今までと変わらぬ美味しい減塩食品(表4)は,ストレスなく長期に亘って使うことのできる大切な宝物である.