カレントテラピー 31-10 サンプル page 17/32
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カレントテラピー 31-10 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.10 65代替療法1062りのナトリウム量は120mg以下③ 低減された旨の表示(「減塩」など):対照となる製品からのナトリウム低減量が100g当たり120mg以上①「無塩」や②「低塩」は絶対表示で理解しやすいが,③「減塩」は相対表示となり対照品との比較で表現することになっているため,対照品のことを知らない場合には理解しにくいかもしれない.対照品には「自社の従来品」や「日本食品標準成分表に掲載のある同分類の食品」が使用されている.前者は各社が自在に定めることができるので,異なる会社の減塩食品の減塩率は単純に比較することができない.後者は1950年代に起点をもつ指標であるため,今日の製品実態をどの程度まで反映できているかが悩ましい問題である.したがって「減塩率」というのは目安としてとらえ,表示された栄養成分そのものをよく見ることが大切である.また調味料などでは,減塩率は低くてもそのもの自体の味が濃くなったために,使用量が減ることで結果的に減塩になることがある.逆に減塩率は高くても,味が薄いために大量に使用してしまうと減塩にならないことがある.家庭での調理は正確な計量より個人の味覚やさじ加減に頼ることも多く,調味料はいつも通り使えるか,あるいは減らして使っても美味しいものが望ましいといえるのではないだろうか.Ⅳ 減塩品質と減塩技術さまざまな種類の減塩食品の開発を積み重ねていくと,ナトリウムの偉大さに嫌というほど気づかされる.特に寿命の長い商品ほど合理的な配合でバランスのよい味に仕上がっているものだ.そのうえで行う「減塩」とは,味の基本骨格である塩味・甘味・酸味の3つ味のうちのひとつを変えるということであり,難儀であることは言うまでもない.料理の世界では「さしすせそ」という言葉がある.これは調味料を入れる順番であり,「さしす」とは「砂糖・塩・酢」であり,「甘味・塩味・酸味」という順番で味をつくれということである.ここで図形をイメージしていただきたい.まずはじめに少し大きめの正三角形を描いていただき,3つの頂点に塩味・甘味・酸味と記す.これがバランスの取れた味だとする.次にこの頂点の一つを動かすと正三角形は崩れる.動かした頂点はそのままにして,その図形をもう一度正三角形に戻すには,他の頂点を動かすしか手段がない.料理に置き換えると塩味を加減した場合,その後の酸味の加減の仕方が重要になってくるということである.減塩食品における減塩技術も基本は同じである.しかしながら薄味に慣れていない日本人にとって,正三角形の頂点の一つである塩味を大きく動かして作った味は,食経験の多い食品になればなるほど受け入れられない可能性が高く得策ではない.よって減塩食品の目標品質は,「塩味4 4 はあまり変化させずに塩分4 4 を減少させたいつもの味」となり,それを達成する手段が「減塩技術」となる.では塩分(ナトリウム)を減らしても塩味を保つことのできる物質を探さなくてはならない.その物質は人々の食経験でも慣れ親しんでいて,塩味(的な)官能が醸し出せるものが好ましく,その昔から沢山の研究者たちが試行錯誤を繰り返してきた可能性のある物質が,牛乳や果実,野菜などに多く含まれるカリウムである(表3).少し脱線するが,牛乳に含まれるカリウム量はカルシウム量より多いことをご存知の方は少ないかもしれない.日本食品標準成分表では普通牛乳100g当たりのカルシウム量は110mgで,カリウム量は150mgとなっている.また,カリウムはご存じのとおり周期表ではナトリウムと同じ第一族に属する元素で,原子量もナトリウムに近い物質である.カリウムの原子量がナトリウムに比較的近いことは,食品の保存性を考える上でも重要な要素になる.(単純にナトリウムだけを減少させる減塩は賞味期間が短くなり,食の安全が担保できなくなる方向へ向かうことになる.)食品原料として利用可能で比較的安価なカリウム含有原料は塩化カリウムであるが,塩味的な強さはあるものの独特の収斂味(苦み的)がある.そのため塩化ナトリウムを単純に塩化カリウムに置き換えて使うと美味しくはなく,異質なものになってしまう.つまり塩化ナトリウムとの全面代替で塩味を同