カレントテラピー31-1 サンプル

カレントテラピー31-1 サンプル page 7/28

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表2甲状腺機能低下症の診断ガイドライン(甲状腺疾患診断ガイドライン2010日本甲状腺学会)【原発性甲状腺機能低下症】a)臨床所見無気力,易疲労感,眼瞼浮腫,寒がり,体重増加,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下,便秘....

表2甲状腺機能低下症の診断ガイドライン(甲状腺疾患診断ガイドライン2010日本甲状腺学会)【原発性甲状腺機能低下症】a)臨床所見無気力,易疲労感,眼瞼浮腫,寒がり,体重増加,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下,便秘,嗄声などいずれかの症状b)検査所見遊離T4低値およびTSH高値原発性甲状腺機能低下症?a)およびb)を有するもの【付記】1.慢性甲状腺炎(橋本病)が原因の場合,抗マイクロゾーム(またはTPO)抗体または抗サイログロブリン抗体陽性となる.2.阻害型抗TSH受容体抗体により本症が発生することがある.3.コレステロール高値,クレアチンフォスフォキナーゼ高値を示すことが多い.4.出産後やヨード摂取過多などの場合は一過性甲状腺機能低下症の可能性が高い.【中枢性甲状腺機能低下症】a)臨床所見無気力,易疲労感,眼瞼浮腫,寒がり,体重増加,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下,便秘,嗄声等いずれかの症状b)検査所見遊離T4低値でTSHが低値~正常中枢性甲状腺機能低下症?a)およびb)を有するもの除外規定?甲状腺中毒症の回復期,重症疾患合併例,TSHを低下させる薬剤の服用例を除く.【付記】1.視床下部性甲状腺機能低下症の一部ではTSH値が10μU/mL位まで逆に高値を示すことがある.2.中枢性甲状腺機能低下症の診断では下垂体ホルモン分泌刺激試験が必要なので,専門医への紹介が望ましい.が確立されていないなど病態生理学的にも判別が困難であることから,中枢性甲状腺機能低下症と一括されている.また,下垂体性はTSHと他の前葉ホルモンの障害を伴う場合,およびTSH単独で障害される場合がある.中枢性甲状腺機能低下症は,約60%は間脳下垂体部の腫瘍が原因であり,その他,頭部外傷やくも膜下出血後,成長ホルモン(growthhormone:GH)製剤や種々の薬剤など表1に示した病態が原因となる3),6)~8).2の原因としては,主に甲状腺ホルモン受容体β変異などによる甲状腺ホルモン不応症があり主に常染色体優性遺伝形式で遺伝する.甲状腺ホルモン不応症では,多くが無症状の場合が多いが,血中甲状腺ホルモンは高値となり,甲状腺ホルモン受容体αが存在することも一因し,甲状腺中毒症と低下症が混在した症状となることもある9).3は肝臓での巨大血管腫による3型脱ヨード酵素の産生によるものがある10).2発症する時期による分類発症する時期により,先天性と後天性に分類される.先天性のものは異所性甲状腺など甲状腺の形成不全によるものが多いが,下垂体に関連した遺伝子異常により他のホルモン異常に随伴するものもある11).3持続する期間による分類持続する期間により一時的に発症する一過性と永続性に分類される.一過性のものは,甲状腺炎などによる破壊性甲状腺中毒症の回復後に引き続き起こるものが多いが,そのまま永続性となる場合もある.また,薬剤やヨードによる一過性のものもあり,必要のないホルモン補充は続けないよう永続性との鑑別が必要である.Ⅲ甲状腺機能低下症の症状1先天性(クレチン症)甲状腺ホルモンは,胎児期,新生児期の中枢神経系,成長などに不可欠である.先天性甲状腺機能低下症はクレチン症とよばれ,知能障害,成長不良,徐脈,筋緊張低下,遷延性黄疸,小泉門の開大などが認められ,新生児スクリーニングの対象となっている.日本では,一部の地域を除き血清TSH値の上昇を基準にスクリーニングされているため,中枢性の甲状腺機能低下症が見落とされている可能性があり注意が必要である.また,軽症例では低身長のみが認められることもある.10Current Therapy 2013 Vol.31 No.110