カレントテラピー31-1　サンプル page 5/28

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甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年甲状腺機能低下症の病態と診断＊1＊2中島康代・山田正信甲状腺機能低下症は，甲状腺ホルモンの合成や分泌障害，作用機構の障害により身体に必要な甲状腺ホルモンの作用が低....

甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年甲状腺機能低下症の病態と診断＊1＊2中島康代・山田正信甲状腺機能低下症は，甲状腺ホルモンの合成や分泌障害，作用機構の障害により身体に必要な甲状腺ホルモンの作用が低下した状態である．その原因の多くが原発性甲状腺機能低下症であり，特に橋本病である．橋本病は内分泌疾患のなかでも最も頻度の高い疾患のひとつで，その約10％で甲状腺機能低下症を起こす．その他の原因としてまれではあるが，中枢性甲状腺機能低下症などがある．中枢性甲状腺機能低下症の多くは，血清甲状腺刺激ホルモン（thyroid stimulatinghormone：TSH）は基準値内にあり注意が必要である．最近では，リンパ球性下垂体炎やIgG4関連疾患によるものも多い．甲状腺機能低下症の症状は特異的なものがなく，進行も穏やかであるため見落とされることが多い．しかし潜在性甲状腺機能低下症でも，脂質異常症や動脈硬化症との関連があるとされ，適切な診断が重要である．また，長期に甲状腺機能低下症が続いた場合は循環器系への影響も評価が必要である．本稿では甲状腺機能低下症の病態と診断，さらに類似した病態の非甲状腺疾患（non-thyroidal illness：NTI）について概説する．Ⅰ甲状腺機能低下症の頻度甲状腺機能低下症には，血清甲状腺刺激ホルモン（thyroid stimulating hormone：TSH）値のみが高値を示す潜在性甲状腺機能低下症と顕性甲状腺機能低下症があるが，その頻度は米国保健栄養調査（NHANES）Ⅲでは潜在性4.3％，顕性0.3％，ColoradoStudyでは潜在性8.5％，顕性0.4％と報告されている1）～3）．本邦でもほぼ同様の頻度である4）,5）．視床下部下垂体刺激抑制TRH刺激TSH抑制T4T4T3フィードバック機構T3T4T3末梢組織Ⅱ甲状腺機能低下症の概念と分類甲状腺機能低下症は，「組織において甲状腺ホル甲状腺図1視床下部－下垂体－甲状腺系T3 T4T4＊1群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学＊2群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学准教授8Current Therapy 2013 Vol.31 No.18