カレントテラピー31-1 サンプル

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甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年―企画群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学教授森昌朋エディトリアルわが国において発見された疾病のなかで,これまで発見者の人名が付けられて,世界的に認知されて....

甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年―企画群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学教授森昌朋エディトリアルわが国において発見された疾病のなかで,これまで発見者の人名が付けられて,世界的に認知されているものは限られている.その限られた疾病のひとつに,本誌で特集が企画されている橋本病がある.九州大学医師の橋本策(はしもとはかる)博士が甲状腺の病理組織学的特徴として,リンパ球の浸潤,濾胞細胞の好酸性変性,結合組織の増生,リンパ濾胞を特徴とする症例をリンパ球性甲状腺腫(Struma lymphomatosa)としてドイツの臨床外科雑誌に報告したのが1912年である.その後,これらの所見を示す疾患は橋本病とよばれるようになり,わが国でいう慢性甲状腺炎とほぼ同一で,病勢が進むと原発性甲状腺機能低下症に陥る.橋本病の発症には臓器特異的自己免疫機転が関与しており,事実,橋本病患者の血中では抗thyroglobulin抗体や抗thyroid peroxidase抗体が90%以上の頻度で陽性となる.また,わが国においては成人男性の約14%,成人女性の約24%でいずれかの抗体が血中に証明される.一方,甲状腺中毒症を示す頻度が高いのはバセドウ病であり,バセドウ病も臓器特異的自己免疫性疾患で,その血中には抗TSH receptor抗体が高頻度に証明される.2012年は橋本病の発見から100周年目にあたり,それを記念して第55回日本甲状腺学会は橋本博士にゆかりの深い博多で2012年11月末から開催され,また橋本病100周年記念国際シンポジウムが続いて開催された.この100年の間に,わが国における研究者が寄与した臨床的・基礎的甲状腺学の発展に対する功績は非常に大きいといえる.現に,最近でもわが国の症例をベースに構築され確定された甲状腺クリーゼの新診断基準の情報が世界に向けて発信されており,この診断基準を用いることにより,重篤なバセドウ病症例に対する診断と治療が的確になされ,患者さんの生命を救うことができるようになった.しかし,橋本病と妊娠・出産の関連については依然として啓蒙不備な点も多く,この点に関して本誌では座談会方式で取り上げる.これらの時代背景をもとに,本誌においてわが国を代表する甲状腺学のエキスパートによる甲状腺機能異常症に関する特集が編纂されたことは意義深いものといえる.今後は本特集を基本として,日常臨床でも症例数の多い甲状腺機能異常を示す患者さんの診療に対する,さらなる臨床能力の向上が期待される.Current Therapy 2013 Vol.31 No.177