カレントテラピー31-1 サンプル

カレントテラピー31-1 サンプル page 16/28

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー31-1 サンプル の電子ブックに掲載されている16ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年橋本病の病態と病理所見(IgG4関連甲状腺炎を含む)*1*2西原永潤・廣川満良橋本病は,日常診療で接する機会の多い疾患である.その特徴的な病態は,一連の自己免疫機序が....

甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年橋本病の病態と病理所見(IgG4関連甲状腺炎を含む)*1*2西原永潤・廣川満良橋本病は,日常診療で接する機会の多い疾患である.その特徴的な病態は,一連の自己免疫機序が密接に関与していることがわかってきた.甲状腺内部では,ヘルパーT細胞(Th)1優位に細胞傷害性T細胞が活性化され,アポトーシスの誘導も認められる.一方,Th2サイトカインによっても抗甲状腺自己抗体産生や間質の線維化が誘導される.これらの免疫反応によって甲状腺濾胞の破壊,リンパ球浸潤やリンパ濾胞の形成,間質の線維化などが病理学的に認められる.一般的に,本疾患の臨床経過は緩徐であるが,甲状腺腫大や萎縮,甲状腺機能変化,無痛性甲状腺炎合併,急性増悪など,多様な病態を呈している.これら橋本病の病態を免疫学的・病理学的所見と対比するなかで,甲状腺組織のIgG4レベルといくつかの臨床所見に有意な相関があることがわかってきた.Ⅰはじめに橋本病は,本特集号の表題にもあるとおり,今から100年前に橋本策博士が報告した特徴的な病理所見が診断の端緒となっている1).それは,びまん性甲状腺腫に,リンパ球・形質細胞の浸潤,リンパ濾胞の形成,濾胞の破壊と濾胞上皮の好酸性変化,線維化組織の増生(図1)などの所見である.その後の研究から,本疾患は甲状腺内で一連の自己免疫機序により,上記のような病理像を形成していくことがわかってきた.一般的に,橋本病は慢性甲状腺炎とほぼ同義語に用いられている.日本甲状腺学会の『慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドライン』では,びまん性甲状腺腫大の臨床所見に加えて,抗甲状腺自己抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体あるいは抗サイログロブリン抗体)陽性,または細胞診でのリンパ球浸潤どちらかの検査所見を満たすことが必須である.日常診療では細胞診施行例は少ないため,ほとんどが抗甲状腺自己抗体の有無にて診断されている.また,甲状腺腫大や甲状腺機能の異常がない健常人においても,抗甲状腺自己抗体が弱陽性となることがある.そして,これらを病理学的に検索すると,非常に高い頻度で橋本病の病理所見が認められる2).このような理由により,抗甲状腺自己抗体の有無は細胞診検査と同等の評価基準になっている.橋本病は臨床経過や病理所見を基に,いくつかのカテゴリーに分けられることがある.近年,IgG4関連疾患という新しい疾患概念が提唱され,橋本病の一部もその病態を呈すること(IgG4関連甲状腺炎)がわかり,新たなカテゴリーのひとつになってきている3),4).ここでは,橋本病の進展に関連している免疫学的・病理学的所見,さらにIgG4関連甲状腺炎の特徴を考えていきたい.*1隈病院内科医長*2隈病院病理診断科科長Current Therapy 2013 Vol.31 No.16161