カレントテラピー31-1 サンプル

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甲状腺中毒症の病態と治療1)医原性甲状腺中毒症甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充療法中あるいは甲状腺癌に対するTSH抑制療法中に甲状腺ホルモン過剰状態になることがある.2)虚偽性甲状腺中毒症意図的....

甲状腺中毒症の病態と治療1)医原性甲状腺中毒症甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充療法中あるいは甲状腺癌に対するTSH抑制療法中に甲状腺ホルモン過剰状態になることがある.2)虚偽性甲状腺中毒症意図的に甲状腺ホルモン製剤を過量摂取した場合や,ひき肉由来などの甲状腺組織を摂取したことにより甲状腺中毒症となる.健康食品,やせ薬に甲状腺ホルモンが含まれている場合がある.3)ヨード摂取過多によるものヨード含嗽薬や消毒薬の投与,ヨードを含む造影剤の使用により甲状腺中毒症が起こることがある.17)3薬物による甲状腺中毒症アミオダロンの投与は甲状腺機能亢進症を伴うもの(Ⅰ型)と甲状腺の破壊機序によるもの(Ⅱ型)のいずれかおよび両者の甲状腺中毒症を引き起こす18).本邦ではⅠ型はまれである.また,インターフェロン,リツキシマブ,リチウム製剤,HIV感染症に対する抗ウイルス剤などの投与が破壊性甲状腺炎やバセドウ病を誘発あるいは増悪させる場合がある.その原因としてTh1,Th2のバランスの変化や,甲状腺細胞のアポトーシスの機序などが考えられている.可能であれば原因薬剤の中止や減量が考慮されるが,原疾患のコントロールが優先される場合は原因薬剤を継続し抗甲状腺薬やβ遮断薬にて加療が行われる.・尿中総ヨード量測定検査最後に,尿中総ヨード量測定検査について触れる.経口摂取されたヨードから甲状腺ホルモンが生成されるが,余剰のヨードは尿中に排出される.よって尿中ヨード量を測定することで摂取ヨード量が推定可能である.また,当検査は甲状腺中毒症の鑑別に用いられる(表1).例えばバセドウ病などの甲状腺機能亢進症においては甲状腺ホルモン合成が亢進し,甲状腺に取り込まれるヨード量が増加するため尿中ヨード量は減少する.逆に無痛性甲状腺炎などの甲状腺破壊機序を伴う病態においては甲状腺からヨードが血中に放出され,尿中ヨード量は増加する.なお検査に先立ち1週間のヨード制限を行うことでより鑑別が明確化する.今後特に妊婦などの甲状腺シンチ実施が不可能な場合において有用な検査と考えられる(平成23年12月保険収載).Ⅲ結語以上のように,甲状腺中毒症の病態は多岐にわたる.そのため,詳細な病歴の聴取,特徴的な身体所見の把握に引き続き,適切な検査と正確な診断に基づいた治療が求められる.参考文献1)Franklyn JA, Boelaert K:Thyrotoxicosis. Lancet 379:1155 -1166, 20122)Cooper DS:Hyperthyroidism. Lancet 362:459-468, 20033)Weetman AP:Graves’disease. N Engl J Med 343:1236 -1248, 20004)Bahn RS:Graves’ophthalmopathy. N Engl J Med 362:726 -738, 20105)「バセドウ病悪性眼球突出症の診断基準と治療指針」作成委員会:「バセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の診断基準と治療指針」(第1次案)(2011年9月日本甲状腺学会)6)Lin SH, Huang CL:Mechanism of thyrotoxic periodic paralysis.J Am Soc Nephrol 23:985-988, 20127)Akamizu T, Satoh T, Isozaki O, et al;Japan Thyroid Association:Diagnostic criteria, clinical features, and incidence of thyroidstorm based on nationwide surveys. Thyroid 22:661-679, 20128)Krassas GE, Poppe K, Glinoer D:Thyroid function andhuman reproductive health. Endocr Rev 31:702-755, 20109)Hershman JM:Physiological and pathological aspects of theeffect of human chorionic gonadotropin on the thyroid. BestPract Res Clin Endocrinol Metab 18:249 -265, 200410)Krohn K, Paschke R:Somatic mutations in thyroid nodulardisease. Mol Genet Metab 75:202 -208, 200211)Krohn K, Fuhrer D, Bayer Y, et al:Molecular pathogenesisof euthyroid and toxic multinodular goiter. Endocr Rev 26:504-524, 200512)Gozu HI, Lublinghoff J, Bircan R, et al:Genetics and phenomicsof inherited and sporadic non-autoimmune hyperthyroidism.Mol Cell Endocrinol 322:125-134, 201013)Beck -Peccoz P, Persani L, Mannavola D, et al:Pituitarytumours:TSH -secreting adenomas. Best Pract Res ClinEndocrinol Metab 23:597 -606, 200914)Suzuki S, Shigematsu S, Inaba H, et al:Pituitary resistanceto thyroid hormones:pathophysiology and therapeuticoptions. Endocrine 40:366-371, 201115)Pearce EN, Farwell AP, Braverman LE:Thyroiditis. N EnglJ Med 348:2646 -2655, 200316)Weetman AP:Immunity, thyroid function and pregnancy:molecular mechanisms. Nat Rev Endocrinol 6:311-318, 201017)Barbesino G:Drugs affecting thyroid function. Thyroid 20:763 -770, 201018)Bogazzi F, Bartalena L, Martino E:Approach to the patientwith amiodarone -induced thyrotoxicosis. J Clin EndocrinolMetab 95:2529 -2535, 2010Current Therapy 2013 Vol.31 No.13939