カレントテラピー31-1 サンプル page 14/28
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ら持続的にTSHが分泌される.甲状腺中毒症による動悸に対してはβ遮断薬が投与されるが治療に難渋することが多い.4異所性甲状腺組織による甲状腺機能亢進症1)卵巣腫瘍卵巣奇形腫における異所性甲状腺組織からの甲....
ら持続的にTSHが分泌される.甲状腺中毒症による動悸に対してはβ遮断薬が投与されるが治療に難渋することが多い.4異所性甲状腺組織による甲状腺機能亢進症1)卵巣腫瘍卵巣奇形腫における異所性甲状腺組織からの甲状腺ホルモン過剰分泌がみられることがある.2)転移性甲状腺癌分化型の転移性甲状腺癌が甲状腺ホルモンを過剰に産生することがある.Ⅱ甲状腺機能亢進症を伴わない甲状腺中毒症以下の病態においては炎症・感染や放射線の影響で甲状腺細胞が破壊されることにより,遊離T3,遊離T4高値とTSH低値が認められる.甲状腺機能は低下するため,甲状腺超音波検査での甲状腺内部血流の低下と甲状腺シンチにおける摂取率の低下が診断の根拠となる.甲状腺中毒症に対してはβ遮断薬が用いられるほか,それぞれの病態に応じて治療が行われる.15)1甲状腺の破壊機序を伴う甲状腺中毒症上記の甲状腺中毒症を示唆する検査所見に加えて,甲状腺破壊に伴う血中サイログロブリン(Tg)値の上昇が認められる.以下のさまざまな機序により甲状腺中毒症が認められる.1)亜急性甲状腺炎ウイルス感染との関連が考えられている.有痛性破壊性甲状腺炎を認め,発熱やC反応性タンパク(CRP)・赤血球沈降速度の増加がみられる.経過中に疼痛部が反対側に移動することが多く,クリーピング現象とよばれる.甲状腺超音波検査にて疼痛に一致して低エコー領域が観察され,甲状腺シンチでは摂取率が著明に低下する.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドによる治療に反応するが,再発例がしばしばみられる.HLA -Bw35が高頻度に認められる.2)急性甲状腺炎先天性奇形のひとつである下咽頭梨状窩瘻における細菌感染症が原因で甲状腺に炎症が波及すると考えられている.発症は小児から若年者に多い.発熱と甲状腺の圧痛を認め,白血球数・好中球数の増加などの急性細菌感染症を示唆する所見を認める.甲状腺超音波検査にて甲状腺周囲から内部にかけて広範囲に境界不明瞭な低エコー領域が観察される.さらに頸部CTにおいて炎症範囲を把握し,下咽頭食道造影を行い瘻孔を描出し,穿刺吸引細胞診で膿汁や白血球を確認する.迅速に抗生物質による治療を行い,安定期に手術を検討する.16)3)無痛性甲状腺炎橋本病や寛解期バセドウ病を基礎とした自己免疫機序による破壊性甲状腺炎と考えられている.産後に無痛性甲状腺炎を発症することがしばしばあり,薬剤が誘因となることもある.眼症状の欠如,血清ALP値の増加がないことが診断への糸口となる.甲状腺超音波にて甲状腺内部血流の低下を確認し,場合により甲状腺シンチによって摂取率の低下を証明する.通常は3カ月以内に甲状腺中毒症は軽快するが,その後甲状腺機能低下症に移行する例があるため経過観察を必要とする.4)放射性甲状腺炎悪性リンパ腫や喉頭癌などに対して頸部に放射線療法を行った結果,甲状腺の破壊的な変化に基づく甲状腺ホルモンの放出が原因により一時的に甲状腺中毒症をきたすことがある.5)放射性ヨード療法によるものバセドウ病や甲状腺癌の治療の際に用いた放射性ヨードが原因で甲状腺細胞が破壊され,血中甲状腺ホルモンが増加する.2甲状腺ホルモン・ヨード摂取過剰による甲状腺中毒症以下の病態においては甲状腺ホルモンやヨード過剰摂取が原因で遊離T3,遊離T4高値とTSH低値が認められる.甲状腺ホルモンを過剰内服した場合は血中Tgが低値となるため破壊性甲状腺炎との鑑別が可能である.治療は原因薬物の減量・中止やβ遮断薬などの対症療法が主体となる.甲状腺機能亢進症との鑑別においては甲状腺シンチにて摂取率が低下することがポイントである.38Current Therapy 2013 Vol.31 No.138