カレントテラピー31-1 サンプル

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甲状腺中毒症の病態と治療遺伝的要因として,近年カルシウム(Ca)チャネルα1サブユニット遺伝子多型の関与やKチャネルKir2.6の異常が指摘されている.高炭水化物食の摂取後休息時に発症することが多く,麻痺は下肢....

甲状腺中毒症の病態と治療遺伝的要因として,近年カルシウム(Ca)チャネルα1サブユニット遺伝子多型の関与やKチャネルKir2.6の異常が指摘されている.高炭水化物食の摂取後休息時に発症することが多く,麻痺は下肢近位筋より始まり四肢麻痺に発展する.低K血症により呼吸筋麻痺や致死性不整脈などの致命的合併症が起こり得るため,治療としてはまず,迅速にK製剤の適切な補充を行い,β遮断薬を投与することが重要である.治療により甲状腺機能が正常化すれば発作は再発しない.?甲状腺クリーゼ7)無治療のバセドウ病やその治療の中断時に感染やストレスなどが誘因になって起こる致死的な病態である.詳細は他稿に譲る.8)2)妊娠や絨毛性疾患による甲状腺機能亢進症ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(human chorionicgonadtropin:hCG)分泌亢進による甲状腺細胞刺激作用の結果,甲状腺機能が亢進する.治療に伴い血中hCG濃度が正常化し,甲状腺機能も正常化する.?妊娠性一過性甲状腺機能亢進症甲状腺中毒症の0.9%を占める.全妊娠の3%に発症し,妊娠悪阻の約60%に認められる病態である.妊娠に伴い胎盤からのhCG分泌が亢進し病態に関与する.遊離T3,遊離T4高値,TSH低値,TRAb陰性に加えて血中hCG高値を認める.甲状腺中毒症を妊娠初期に認めるものの自然軽快するため,通常薬物治療は不要である.重症の甲状腺中毒症においては無機ヨードが使用される.9)?絨毛腺腫・絨毛癌・胞状奇胎・hCG産生腫瘍それぞれの絨毛性組織からのhCG過剰産生が甲状腺機能亢進症に関与する.原則として手術療法が考慮される.2甲状腺細胞の自律的活動亢進1)機能性結節性甲状腺腫?Plummer病自律性機能性甲状腺結節(autonomously functioningthyroid nodule:AFTN)10)?中毒性多結節性甲状腺腫(toxic multinodulargoiter:TMNG)11)?,?ともに腫瘍においてTSH受容体遺伝子やGsα遺伝子変異が確認されているものの,特にTMNGにおける詳細な病因は明らかにされていない.日本ではTMNGはまれである.血液検査上,遊離T3,遊離T4高値,TSH低値を認める.TRAbは陰性である.動悸・手指振戦・発汗などの甲状腺中毒症状がみられる.甲状腺の結節状腫大を認めるが,眼球突出はない.甲状腺エコーにて結節部の血流増加を認め,甲状腺シンチでは結節状に取り込みがみられる(hot nodule).確定診断は病理診断にてなされる.両者ともに抗甲状腺薬による治療では寛解に至らない場合が多く,小さい結節ではpercutaneousethnol injection therapy(PEIT),それ以外では手術療法または放射性ヨード療法が考慮される.なお,バセドウ病に機能性結節を合併したものをMarine -Lenhart症候群とよぶ.12)2)非自己免疫性甲状腺機能亢進症TSH受容体遺伝子の胚細胞変異により自律性に甲状腺細胞が甲状腺ホルモンを分泌する病態である.家族性または散在性のものが報告されている.ほとんどの例にて甲状腺腫大と甲状腺機能亢進症を認める.遊離T3,遊離T4高値,TSH低値を認めTRAbは陰性である.抗甲状腺薬の効果は低く,放射性ヨード療法あるいは甲状腺摘出術が行われる.3 TSHの産生過剰に伴う甲状腺機能亢進症以下の病態においては血中遊離T3,遊離T4が増加しているにもかかわらずTSH分泌が抑制されないため,Inappropriate secretion of TSH(SITSH)と形容される.13)1)下垂体TSH産生腫瘍下垂体腫瘍の約0.5%を占める.下垂体腺腫よりTSHが分泌され遊離T3,遊離T4高値を認める(下垂体性甲状腺機能亢進症),甲状腺中毒症を呈する.下垂体MRIにより腫瘍を確認することが診断に必要である.TSHの分泌は自律性のため,甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin -releasinghormone:TRH)負荷試験におけるTSHの反応は乏しい.抗甲状腺薬の効果は低いため経蝶形骨洞腫瘍摘出術が考慮される.残存腫瘍に対しては放射線外照射やオクトレオチド投与が行われる.14)2)下垂体型甲状腺ホルモン不応症甲状腺ホルモン受容体(thyroid hormonereceptorβ:TRβ)遺伝子の変異により下垂体かCurrent Therapy 2013 Vol.31 No.13737