カレントテラピー31-1 サンプル

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甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年甲状腺中毒症の病態と診断*1*2稲葉秀文・赤水尚史甲状腺中毒症は血中の甲状腺ホルモン作用が過剰な状態であり,バセドウ病がその7~8割を占める.甲状腺中毒症は1甲状腺機....

甲状腺機能異常症―橋本病発見より100周年甲状腺中毒症の病態と診断*1*2稲葉秀文・赤水尚史甲状腺中毒症は血中の甲状腺ホルモン作用が過剰な状態であり,バセドウ病がその7~8割を占める.甲状腺中毒症は1甲状腺機能亢進症によるものと,2甲状腺機能亢進症を伴わないものを包括した概念である.1は甲状腺の活動性が亢進した状態であり,(1)バセドウ病など,甲状腺刺激物質による甲状腺機能亢進症,(2)甲状腺細胞の自律的活動亢進,(3)甲状腺刺激ホルモン(thyroidstimulating hormone:TSH)の産生過剰に伴う甲状腺機能亢進症,(4)異所性甲状腺組織による甲状腺機能亢進症に分類される.一方,2は(1)甲状腺の破壊機序を伴う甲状腺中毒症,(2)甲状腺ホルモン(T3,T4)やヨード摂取過剰による甲状腺中毒症,(3)薬物による甲状腺中毒症に分類される.本稿では,甲状腺中毒症の病態と診断に加え,治療方針についても簡潔に述べる.Ⅰ甲状腺機能亢進症による甲状腺中毒症1甲状腺刺激物質による甲状腺機能亢進症1),2)(表1)1)バセドウ病3)臓器特異的自己免疫疾患のひとつであり,抗甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)受容体抗体(TRAb/TSAb)が甲状腺濾胞上皮細胞上のTSH受容体に結合することにより細胞が活性化し甲状腺ホルモン(T3,T4)が過剰に産生される病態である.甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気であり甲状腺中毒症の7~8割を占める.バセドウ病の罹患割合は200~1,000人に1人とされ,男女比は1:5程度である.発症年齢は,20~40歳代が全体の半数以上を占めている.ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)やTSH受容体遺伝子,免疫調整因子(CTLA -4,CD40,PTPN22)などの遺伝子的要因に加えて,喫煙やストレスなどの環境因子が作用して発症する.ウイルス感染の関与も示唆されている.バセドウ病では,Merseburgの三徴(びまん性甲状腺腫,眼球突出,頻脈)をはじめとして,体重減少,手指振戦,発汗,易疲労,息切れ,いらいら,食欲亢進,下痢などの症状を示す.バセドウ病は甲状腺中毒症を疑う病歴,甲状腺のびまん性腫大,血中遊離T3,遊離T4高値,TSH低値,および抗TSH受容体抗体(TRAb/TSAb)陽性などにより診断される(表2).血液検査上,総コレステロール(TC)値低下,クレアチニンキナーゼ(CK)値低下,アルカリフォスファターゼ(ALP)高値を示すことが多い.肝逸脱酵素異常や食後の血糖値上昇(oxyhyperglycemia)がみられる.画像検査では,甲状腺超音波にて甲状腺のびまん性腫大と血流の増加を認める.甲状腺シンチとして123 Iや99m Tcが用いられ,びまん性に甲状腺への取り込み増加を認める.バセドウ病の治療は他稿に譲る.*1和歌山県立医科大学内科学第一講座助教*2和歌山県立医科大学内科学第一講座教授Current Therapy 2013 Vol.31 No.13535