カレントテラピー 30-9 サンプル

カレントテラピー 30-9 サンプル page 6/28

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り,2025年には15,700人になると推定され,これは肺癌,胃癌,大腸癌,膵臓癌に次いで第5番目の死亡数に当たる5).癌の部位別年齢調整死亡率(昭和60年のモデル人口で調整;人口10万人あたり)については5),上位6....

り,2025年には15,700人になると推定され,これは肺癌,胃癌,大腸癌,膵臓癌に次いで第5番目の死亡数に当たる5).癌の部位別年齢調整死亡率(昭和60年のモデル人口で調整;人口10万人あたり)については5),上位6番目までの癌で上昇傾向にあるのは,スクリーニングが困難で発見時には予後がきわめて悪く比較的若い年齢層で死亡する膵癌だけである.その他の5つの癌のうち肺癌,大腸癌,前立腺癌は,75歳以上の高齢者において癌死亡数が増加傾向にあることから,死亡実数は増加しているが,昭和60年のモデル人口で補正すると,年齢調整死亡率は肺癌と大腸癌は比較的低下率が高く,前立腺癌はわずかな低下傾向にある.胃癌の死亡実数は74歳以下の年齢層においてやや減少傾向にあり,75歳以上の高齢者での死亡者数は増加傾向であることから,年齢調整死亡率は大きく低下している.肝癌はほとんどすべての年齢層において死亡数は激減し,年齢調整死亡率も同様に激減している.前立腺癌死亡率の変化の世界的な傾向としては2),最近10年間での年死亡率低下率が最も大きいのは米国の4.3%で,次いでオーストリアのチロル地方の4.0%,イスラエルの3.7%と続いており,なかでも米国は最近10年間の年罹患率の変化はわずか0.1%の増加にとどまっている.最近10年間の日本の罹患率の年平均上昇率は7.2%と高く,死亡率の年平均低下率は0.7%と緩やかである.また10年間の年平均死亡増加率が高い国はエストニアで2.9%ずつ増加しており,次いでラトビアの2.8%,ブラジルの1.9%の順に高い.Ⅱ日本の前立腺癌検診の現状と前立腺癌の特徴わが国では,1992年以降の前立腺特異抗原(prostatespecific antigen:PSA)時代であっても,住民検診でPSA検診を導入していない,あるいは導入していてもPSA検診曝露率が5%以下の市町村では,癌登録症例に占める転移癌の割合は約35%と高い6).日7本泌尿器科学会が行った前立腺癌患者登録調査)によれば,住民検診の曝露率が低いわが国では遠隔転移症例比率は13.7%と依然高率であるのに対し,PSA曝露率が高い米国ではその割合は4%と低い8).財団法人前立腺研究財団の前立腺がん検診研究班より発表された平成13~17年度の住民検診の報告9書)によると,252市町村,延べ456,613人の集計の結果,PSA検査異常症例率は8.0%で,PSA検査異常者に対する精密検査受診率は57.9%であった.生検施行率(生検施行者数/精密検査受診者数)は59.6%で,前立腺癌発見率(前立腺癌症例数/検診受診者数)は1.11%,生検陽性率(前立腺癌症例数/生検施行者数)は40.0%であった.検診発見癌症例の臨床病理学的特徴については,平成14~17年度の集計の結果,臨床病期では,病期B以下の症例の割合が75.5~78.4%と高く,転移癌は5.5~6.5%と低かった.Gleason scoreは各年度ともに6以下の割合が最も高く39.8~42.9%であり,次いでGleasonscore 7の割合が高かった.Gleason score 8~10は最も低かったものの,依然として検診発見癌の21.2~23.1%を占めており,現在の米国におけるGleasonscore 8~10の割合と比べると高い.欧米先進国におけるPSAスクリーニング導入後の発見前立腺癌の特徴については,オーストリアのチロル地方では,45~75歳を対象に1988年よりPSA検査と直腸診による前立腺癌検診を開始し,1993年より無料でPSAスクリーニングを実施したところ,病期Ⅰ~Ⅱの症例が増加し続け,病期Ⅲは1994年より若干の低下傾向,病期Ⅳは1994年以降に急激な低下を示し,2004年には1988年と比べ転移癌の罹患率が75%も低下した10).また,カナダのケベック州では,1988年より45~80歳を対象とし,PSA基準値を3.0ng/mLに設定して初回検診時は直腸診を併用してスクリーニングを行った結果,検診受診によって発見された癌の転移癌症例比率は,初回検診時は6.4%で,2回目以降の検診発見癌に転移症例はいなかった11).特にPSAスクリーニングが広く普及している欧米先進国では,検診実施による死亡率低下の利益がもたらされる過程において,同時に過剰診断・過剰治療による不利益を被る可能性があり,その不利益を減らすためのさまざまな対策について臨床研究がCurrent Therapy 2012 Vol.30 No.98779