カレントテラピー 30-9 サンプル page 23/28
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前立腺癌の今後の薬物療法への期待宮崎大学医学部泌尿器科学分野教授賀本敏行前立腺癌は男性ホルモン依存性であり,1941年にHugginsらの報告以来,約70年経過した現在も前立腺癌治療において,ホルモン療法を凌駕す....
前立腺癌の今後の薬物療法への期待宮崎大学医学部泌尿器科学分野教授賀本敏行前立腺癌は男性ホルモン依存性であり,1941年にHugginsらの報告以来,約70年経過した現在も前立腺癌治療において,ホルモン療法を凌駕するような薬物療法は存在しない.そのホルモン療法も,当初は外科的去勢術やエストロゲン剤による治療から始まったが,現在ではほぼLH -RHアゴニストが中心となっている.また,抗アンドロゲン剤もステロイド性から非ステロイド性のフルタミドやビカルタミドが中心となり,特に進行性前立腺癌に対してはその両者を併用したcombinedandrogen blockade(CAB)が標準治療となっている.長らく薬物療法としてはこれらが中心であり,できるだけホルモン感受性を保つための工夫や,抗アンドロゲン剤交替療法などが行われてきた.しかしながら,ここ数年でいくつかの薬物療法が確立し,また今後も新規薬剤が種々登場する予定である.米国ではすでにLH -RHアンタゴニストが使用されているが,本邦でもすでに治験が終了し,2012年中には薬事承認される見込みである(2012年6月承認).また,従来のLH-RHアゴニストで危惧された投与初期に一過性のテストステロン値が上昇するフレアアップ現象がなく,特に治療前から骨転移による疼痛や尿路閉塞などが認められる進行癌では第一選択になる可能性がある.CAB療法後に進行した場合の「ホルモン不応性前立腺癌(hormone refractory prostatecancer:HRPC)」に対しても,長らく有効な治療法が存在しなかったが,2004年に有意に生存率を改善する初めての抗癌剤としてドセタキセルが登場した.その後,ドセタキセルはHRPCに対するひとつの標準治療として確立した.しかしドセタキセル治療後の進行した患者に対し,微量のアンドロゲンも合成阻害するCYP17阻害薬のabirateroneが効果を示すことが報告されるに至り,「ホルモン不応」という用語は使用されなくなり,現在では「去勢抵抗性前立腺癌(castrationresistant prostate cancer:CRPC)」という用語に統一されている.2011年に米国食品医薬品局(FDA)は,前述したabirateroneとドセタキセルと同じタキサン系の抗癌剤である「cabazitaxel」を承認した.ともにCRPCに対しドセタキセル治療後に生存率の改善に対する有効性が認められてのものであったが,2012年6月現在,本邦で治験中である.また,アンドロゲン受容体アンタゴニストであるMDV3100はアンドロゲン受容体への親和性がきわめて強く,abirateroneと同じくドセタキセル治療後に生存率改善効果を認めており,現在FDAに承認申請中であり,本邦でも治験が開始されている.さらにabirateroneと同じく微量アンドロゲン合成阻害薬(CYP17リアーゼ阻害薬)としてTAK700も治験中である.2012年4月に本邦でも新しい骨転移治療薬として抗RANKL抗体であるデノスマブが承認され使用可能となった.骨転移治療薬としては米国で治験中のラジウム223が抗腫瘍効果の面から有望で,近くFDAに承認申請される可能性が高く,今後も多くの新規薬剤が登場することが予想される.これら薬物療法は米国では主に腫瘍内科医によって行われているが,本邦では泌尿器科医がその役割を負っている.その意味で,これらの薬剤が本100 Current Therapy 2012 Vol.30 No.9968