カレントテラピー 30-9 サンプル

カレントテラピー 30-9 サンプル page 22/28

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明日を見据えた前立腺癌診療前立腺癌遺伝子治療の可能性岡山大学病院新医療研究開発センター教授那須保友1はじめに前立腺癌は,病巣へのアクセスが容易であること,治療効果の判定が前立腺特異抗原(prostate specif....

明日を見据えた前立腺癌診療前立腺癌遺伝子治療の可能性岡山大学病院新医療研究開発センター教授那須保友1はじめに前立腺癌は,病巣へのアクセスが容易であること,治療効果の判定が前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)を用いることで精度よく行えること,また進行が緩徐であることにより,遺伝子治療を実践するのに最も適したターゲットである.しかし,治療製剤として上市化されたものはほとんどない.現状は科学的エビデンスが蓄積されつつあり,また遺伝性疾患に対する遺伝子治療の臨床的な効果が確認されつつあるため,今後大きなブレイクスルーが期待されるといえる.2臨床研究の現況癌に対する世界の遺伝子治療プロトコール数は約1,000件であり,いずれも第Ⅰ相から第Ⅲ相試験であり,治療薬として認可されたものは中国における2種類のアデノウイルス製剤のみである.泌尿器科領域においては前立腺癌に対するプロトコールは約100件と悪性黒色腫に次いで多く,腎臓癌が約30件,膀胱癌が約10件である.治療遺伝子を運ぶいわゆるベクターに用いられるのはアデノウイルスが最も多い.本邦においては27件の臨床研究のプロトコールが登録されており,泌尿器科領域では5件の前立腺癌に対するプロトコールが登録されている.内訳は自殺遺伝子治療(Herpessimplex virus thymidine kinase gene:HSV-tk gene)3件,免疫遺伝子治療(Interleukin- 12 gene)1件,新規治療遺伝子(Reduced expression in immortalized cell:REIC)を用いた治療1件である.3今後の臨床応用への期待治療製剤として市場に広く出回り,多くの患者に使われるようになるためには第Ⅰ相から第Ⅲ相試験において有効性が確認されることが条件である.国内で製剤化が期待されている候補遺伝子は上記REICである.岡山大学において不死化関連遺伝子として独自に同定された遺伝子であり,癌細胞特異的細胞死と抗腫瘍免疫能の活性化を同時に誘導することが確認されている.自己癌ワクチン化製剤として現在臨床開発が進行中でありその安全性と臨床的・免疫学的有効性が確認されつつある.国外においては自殺遺伝子治療(HSV -tkgene)を用い内分泌療法・放射線療法を併用する大規模な前向き臨床試験(第Ⅲ相試験)が米国において開始されておりその結果が待たれるところである.今後はさらに有効なベクターの開発,特にウイルスベクター以外のベクターの開発,既存の治療法との併用などが研究され,近い将来,新たな治療法が確立されるものと期待される.Current Therapy 2012 Vol.30 No.996799