カレントテラピー 30-9 サンプル

カレントテラピー 30-9 サンプル page 19/28

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高くなるが,放射線治療で局所前立腺癌の制御に成功していない場合,血尿や尿閉などの局所症状をきたすことがあるが手術療法はそのような問題を回避してくれる.放射線治療による晩期の合併症は頻度が低い合併症では....

高くなるが,放射線治療で局所前立腺癌の制御に成功していない場合,血尿や尿閉などの局所症状をきたすことがあるが手術療法はそのような問題を回避してくれる.放射線治療による晩期の合併症は頻度が低い合併症ではあるが,ひとたび出血性膀胱炎などの合併症をきたした症例の生活の質(QOL)は著しく悪い.現在の前立腺癌に対する治療体系ではともすれば,治療による成功率のみが取り出され,治療不成功に終わった場合の利益,不利益があまり考慮されていないのではと思われる.現在,再発のリスクが低い病態に対しては実際どのような治療法を行っても生存率に関して大差はない.治療成績に大差がないとなると,より侵襲の少ないQOLの高い手術方法,あるいは治療法が選択されてしかるべきであると思われる.逆説的にハイリスクとよばれる病態に対して手術療法がどのような役割があるか,これが今後の開放手術の目標になるのではと思われる.近年リンパ節郭清における拡大郭清に治療的意義3があるとする見解)もある.また膀胱頸部浸潤は新4しいTNM分類)ではこれまでT4であったものがT3aとなった.膀胱頸部浸潤は膀胱と前立腺の間には解剖学的な境界がはっきりしないことより癌細胞が被膜外進展したのと同様の現象が膀胱頸部浸潤であると解釈され,病態的には隣接臓器浸潤とは異なると判断されるからである.現在の腹腔鏡やロボット支援手術において膀胱頸部は温存される.これは大きく膀胱を開けて頸部ごと切除すると修復・縫縮が必要であるためである.ロボット支援手術において修復・縫縮は可能であるが,腹腔鏡下手術では運針に困難があるため,膀胱頸部を温存するしかない.われわれはこのような問題意識に基づき,より広汎な切除を可能とする手術療法を実施してきた.開放手術においては膀胱頸部を大きく離断して縫縮することはなんの苦労もない.リンパ節郭清においても必要なら拡大して実施することが可能である.これらにより完全切除を目指すとともに正確な病理結果も得ることができる.今後,開放手術が果たす役割はハイリスク前立腺癌の治療ではと思われる.だとするとこれまで構築されてきた「再発をきたしにくい条件」を探り,よい適応だけに手術を実施するという理論は開放手術には役立たないことになる.治療の対象が,そもそも再発しやすい病態であり,このような病態に対して手術療法による根治が期待できる病態はどのようなものか,という今まであまり検討されてこなかった病態に対する挑戦となるのではと思われる.逆に今まで前立腺全摘術の適応とされていた病態に対してのみ手術を実施するとなると,米国でロボット支援手術が爆発的に普及したように開放手術の役割は限られることになると思われる.本稿では開放手術における神経温存術式と神経温存を意図せず広汎に切除を行う方法について概説する.Ⅱ方法と成績前立腺癌に対する手術療法は今から100年以上前,Young(1905年)5)により経会陰的に前立腺全摘術が実施された.また恥骨後式前立腺全摘術はMillin(1948年)6)が先駆者となって施行された.その後,この手術の発展は1982年,Walshら7)により前立腺周囲の解剖が研究され,尿道括約筋ならびに陰茎海綿体神経(cavernosal nerve)の構造を明らかにし,尿道機能ならびに勃起機能温存手術を確立したことより手術法として確立した.開放手術では一般的には腹膜は切開せず膀胱前腔を開放して行う恥骨後式前立腺全摘術が一般的である.会陰式前立腺全摘術は尿道が直下に見える,前立腺全摘術において出血をきたすサントリーニ(Santorini)静脈叢を処理しなくても切除が可能などのメリットもあるが,視野が制限されることやリンパ節郭清ができないことなどより一部の施設において実施されるにとどまっている.恥骨後式前立腺全摘術にはまず前立腺尖部で尿道と前立腺を離断する逆行性前立腺全摘術と,膀胱頸部と前立腺を切り離し,その後尖部の処理を行う順行性前立腺全摘術がある.逆行性前立腺全摘術では膀胱頸部と前立腺の離断が容易に把握できるのに対40Current Therapy 2012 Vol.30 No.9908