カレントテラピー 30-9 サンプル page 15/28
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前立腺癌治療の観点どが問題になる.ホットフラッシュや骨塩量低下に伴う骨折はQOLに大きな影響を与える.さらに,長期のホルモン療法において最も注意しなければいけないものに心血管合併症がある.ホルモン療法の....
前立腺癌治療の観点どが問題になる.ホットフラッシュや骨塩量低下に伴う骨折はQOLに大きな影響を与える.さらに,長期のホルモン療法において最も注意しなければいけないものに心血管合併症がある.ホルモン療法の適応は,あくまでも患者のリスクとベネフィットを考慮して決定されるべきである.前立腺癌におけるホルモン療法の明確な適応は,1高リスク群に対するEBRTとの併用,2BTに先立って前立腺を縮小すること,3進行癌患者の合併症および症状の緩和,の3つとされている41).わが国からの報告でも,高リスク前立腺癌患者に対して約半数にホルモン療法が施行されており,特に若年者の性機能低下によるQOLの障害が指摘されている42).一方で,日本人は重篤な心血管系合併症のリスクは必ずしも高くなく,性機能低下に対する懸念も欧米人ほど強くないため,QOLの低下は低いとする報告もある43).3 Active surveillance(PSA監視療法)米国では,50歳以上の男性の8割が一生に一度PSA検査を受けている.そんななか,2011年10月7日づけで,米国予防医学作業部会から,前立腺癌を疑わせる症状のない男性を対象としたPSAを用いた前立腺癌検診は,年齢を問わずこれを行わないようにという勧告が出されたが,前立腺癌特有のinsignificant cancerの存在,過剰治療への警鐘がその背景にはあると思われる.しかし,日本ではいまだPSA検診率は1割程度であり,米国の状況をそのまま受け入れる訳にはいかない.一方で,欧州の11年間の前向き調査で,PSA検診で前立腺癌の死亡率が低下したと報告している44).PSA監視療法の最大の目的は,積極的治療介入による過剰治療の回避である.わが国も2010年から参加を開始したPRIASというPSA監視療法研究があり,今後の報告が待たれる.手術療法,放射線療法やホルモン療法に伴う排尿や性機能障害がないため,QOLは当然良好であるが,根治のタイミングを逸してしまうのではないかという負の心理的要因があり,神経質な患者には不向きである.Ⅶ治療法選択に影響を与える因子1患者の傾向と選択動機治療法のdecision -makingに際し,患者の傾向として,RPを選択する患者は他の治療を選択する患者に比べ,前立腺癌をより重大なことと受け止めtreatment decisionにより困難と苦痛を感じるとされている.また,depressive symptom scoreもRPを選択する患者で高い傾向にあるとの報告がある45).選択動機に関する研究では,RPを選択する患者は,「治癒」と「癌の完全切除」を,BTを選択する患者は,「より低侵襲」と「手術回避」であるとの報告がある46),47).同様に,最近の研究においても,「癌を物理的に除去したい」ことがRPを選択する最も大きな理由であるとされ,特に際立った特徴になっている48).これは,癌を切除して安心感を得たいのだろうと思われる.一方,BTを選択する患者は「ライフスタイルに合っている」が一番の選択理由になっている.2 QOLの面からみたRPとBTの比較項目sexual function回復:urinary incontinenceが少ない:obstructive/irritativeが強い場合:優位性BT?両側神経温存-RP>神経温存なし-RPBT>RPRP>BT3 QOLからみた限局性前立腺癌治療の位置づけ基本的な考え方としては,何もしないでよいならそれに越したことはなく,治療すれば多かれ少なかれQOLを損なうこと,PSA eraにおける癌特異的死亡率は低リスクなら低いということから,まずはPSA監視療法の可能性を追求すべきと考えられる.ただし,治療介入が必要な場合,あまりQOLを損なわない治療法はBTであることを念頭に入れる必要がある.ただし,性機能が元々低いか関心がなく,obstructive / irritative symptomsが強い(前立腺が大きい)症例はRPの適応がある.一方,全周性にprostatic fascia sparingができる場合はdaCurrent Therapy 2012 Vol.30 No.989931