カレントテラピー 30-9 サンプル page 10/28
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明日を見据えた前立腺癌診療治療法選択のための考え方宮里*1*2*3*4実・並木俊一・斎藤誠一・荒井陽一わが国においても,前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)スクリーニングの普及に伴い,限局性早....
明日を見据えた前立腺癌診療治療法選択のための考え方宮里*1*2*3*4実・並木俊一・斎藤誠一・荒井陽一わが国においても,前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)スクリーニングの普及に伴い,限局性早期前立腺癌の患者が急増している.それに伴い治療方法の選択肢も多様化してきた.従来の開腹(開放)手術に加えて,腹腔鏡手術,さらには2012年4月からロボット支援手術も保険収載となった.放射線治療においても外照射のほかに小線源療法があり,ホルモン療法と組み合わせることによって,低~高リスクまで幅広くカバーできるようになった.Focaltherapyとしての高密度焦点式超音波療法(high-intensity focused ultrasound:HIFU)も治療選択肢のひとつとして残っており,低リスクへのPSA監視療法も確固たる地位を築きつつある.限局性早期前立腺癌の根治性をエンドポイントとした各種治療にはさほど優劣がなく,排尿機能や性機能などの生活の質(QOL)もエンドポイントとして加味した個別治療の必要性が高まっている.本稿では,D’Amicoのリスク分類に沿って根治性の面から各種治療を,QOLの面からそれぞれの治療法の特徴・留意点を解説する.Ⅰはじめに前立腺癌は,他の癌腫と違い腫瘍の増殖速度が遅く,悪性度もinsignificant cancerから局所浸潤癌まで多彩である.前立腺特異抗原(prostate specificantigen:PSA)は唯一有力な診断マーカーだが,最終的には針生検で診断を確定する.病理学的には,細胞の構造異型から悪性度を判定するGleason scoreを用いる.MRI画像も臨床病期の決定に有用な手段となっているが,いまだに直腸診は欠かせない.このように,前立腺癌の治療決定には,複数の因子から総合的に判断する必要がある.前立腺癌のリスク分類がこれに相当し,最も有名なのがD’Amicoのリスク分類である1).D’Amicoのリスク分類は予後と相関することが報告されており2),ノモグラムよりも簡便で根治性を追求するうえでも有用なツールである.一方,前立腺癌の治療には,性機能・排尿機能といった生活の質(QOL)の側面があり,前立腺全摘術(radical prostatectomy:RP),放射線療法〔外照射(external beam radiotherapy:EBRT)・密封小線源療法〕,ホルモン療法それぞれに合併症があり,根治性にそれぞれの治療に優劣が少なく,QOLを治療選択肢のエンドポイントとして考慮することが当然となってきている.本稿では,根治性,QOLの面からそれぞれの治療法の特徴・留意点を解説する.*1琉球大学大学院医学研究科医科学専攻泌尿器科学講座講師*2東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野助教*3琉球大学大学院医学研究科医科学専攻泌尿器科学講座教授*4東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野教授26Current Therapy 2012 Vol.30 No.9894