カレントテラピー 30-8 サンプル page 5/28
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心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患アルブミン尿の意義*1*2柏原直樹・佐藤稔慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)概念の中核は1アルブミン尿・タンパク尿,2糸球体濾過量(glomerula....
心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患アルブミン尿の意義*1*2柏原直樹・佐藤稔慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)概念の中核は1アルブミン尿・タンパク尿,2糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)60mL/分/1.73m 2未満の濾過率低下である.両者は各々独立して腎不全への移行と,心血管病(cardiovascular disease:CVD)発症と連関する.とりわけアルブミン尿は「微量アルブミン尿」の下限閾値以下の「超微量」域から,CVD発症と連関する.微量アルブミン尿は早期,軽症の病態ではなく,「微量」概念の変更が迫られている.なぜアルブミン尿がCVDと連関するのか.両者の共通基盤病態として血管内皮機能障害を想定すれば理解が容易であり,事実,そのエビデンスが集積しつつある.腎臓は徴候に乏しい「寡黙」な臓器であるが,検尿所見は腎臓内での出来事を雄弁に語る.とりわけアルブミン尿は腎臓が発する重大な警鐘とみなせよう.Ⅰはじめに生活習慣の変化,高齢化を背景にして日本人の疾患構成,成因は大きく変化している.腎臓病もその例外ではない.近年になり,末期腎不全への移行以前の早い段階から脳卒中,虚血性心疾患などの心血管病(cardiovascular disease:CVD)を高率に発症することが判明した.腎障害を簡便に慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)と把握すべき臨床上の要請がここにある.CKD患者の直近の診療目標はCVDの発症阻止にある.CKDの定義のなかで,1アルブミン尿・タンパク尿,2糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)60mL/分/1.73m 2未満の濾過率低下が,独立したCVDとの連関因子である.アルブミン尿は生活習慣病を基盤としたCKDにおいて共通した初期所見であり,微量アルブミン尿の下限閾値以下の超微量域から,CVD発症と関連する.アルブミン尿の出現機構,臨床的意義を理解することが,CVD合併症を防止するうえで必須である.Ⅱアルブミン尿とタンパク尿1アルブミン尿の測定法尿タンパクの検出には試験紙法が用いられる.微量アルブミン尿は試験紙法での検出閾値以下の少量の尿中アルブミン排泄状態を指す.尿中アルブミン排泄量測定のgold standardは,24時間蓄尿中のアルブミン量の測定であるが,手技の煩雑さからスクリーニング検査には適さない.次善の方法が,overnight蓄尿を行い,アルブミン排泄率(albuminexcretion rate:AER)で表示するものであるが,*1川崎医科大学腎臓・高血圧内科学教室教授*2川崎医科大学腎臓・高血圧内科学教室講師8Current Therapy 2012 Vol.30 No.8736