カレントテラピー 30-8 サンプル

カレントテラピー 30-8 サンプル page 4/28

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心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患―企画東京女子医科大学第四内科主任教授新田孝作エディトリアル心臓と腎臓には,相互依存的な関係が存在することが指摘されてきた.心不全の急性増悪や心....

心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患―企画東京女子医科大学第四内科主任教授新田孝作エディトリアル心臓と腎臓には,相互依存的な関係が存在することが指摘されてきた.心不全の急性増悪や心機能の慢性的な低下は腎機能を悪化させる要因であり,腎臓病の急性増悪や慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の進行が心機能に悪影響を及ぼすことは,臨床的によく経験する.この関連性は,心腎連関(heart-kidney interaction)あるいは心腎症候群(cardio-renalsyndrome:CRS)として注目されるようになった.2008年にRoncoらは,この病態をCRSとして5つの病型に整理したが,実際には多様な病態を包含した概念である.CKDでは,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)が賦活化され,糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)の低下に伴う水・塩分の貯留が,心血管疾患(cardiovasculardisease:CVD)の増悪につながる.また,CKDに伴う交感神経活性の亢進により,カテコラミンによる心筋肥大に連鎖し,血管抵抗の増強による後負荷が増加し,CVDは一層増悪する.さらに,酸化ストレスの亢進により,一酸化窒素の産生を減少させ,平滑筋細胞の増殖・遊走とともに炎症性サイトカイン濃度が増加し,腎臓のみならず心臓や血管に悪影響している.この病態に貧血が加わると,さらに悪循環を形成することになる.これは,Silverbergらが提唱した,心腎貧血症候群(cardio -renal anemia syndrome)と総称されている.CKDステージ3以降では,エリスロポエチン産生の低下による腎性貧血の頻度が高くなる.貧血がCKDやCVDの増悪因子であり,赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による貧血改善がCKDの進行を抑制し,心肥大を退縮させることが報告されている.よって,CKD -CVDの治療には,RAASの抑制に加え,貧血治療が重要になってきた.保存期腎不全においては,Hb濃度が11~12g/dLを目標として,ESA製剤を適正に用いることが重要である.心腎連関における腎障害を評価するために,GFRとタンパク尿あるいはアルブミン尿の測定が重要である.GFRは日本人の推算式で計算され,タンパク尿は随時尿でのタンパク/クレアチニン比で容易に評価できる.しかし,アルブミン尿はCVDとCKDの早期マーカーでありながら,保険診療上の問題から,その測定は普及していない.CKDの重症度を評価するためには,アルブミン尿測定の保険適用が望まれる.本特集を通じて,心腎連関の病態を理解したうえで,適切な治療方針の決定に役立てていただければ幸いである.Current Therapy 2012 Vol.30 No.87357