カレントテラピー 30-8 サンプル page 23/28
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Key words血管石灰化東京女子医科大学東医療センター内科准教授小川哲也東京女子医科大学東医療センター内科助教興野藍東京女子医科大学東医療センター内科准教授中岡隆志東京女子医科大学東医療センター内科教授大....
Key words血管石灰化東京女子医科大学東医療センター内科准教授小川哲也東京女子医科大学東医療センター内科助教興野藍東京女子医科大学東医療センター内科准教授中岡隆志東京女子医科大学東医療センター内科教授大塚邦明心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)は,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者における死因の第一位であり,冠動脈や大動脈の血管石灰化が,CKD患者のCVDの発症・進展に関与していることが報告されている.血管石灰化の病理学的特徴として,動脈内膜の粥状硬化巣に起こる石灰化と動脈中膜の平滑筋層に起こるMonckeberg型石灰化の2種類がある.Monckeberg型石灰化は,カルシウム(Ca)・リン(P)代謝異常によって平滑筋細胞が骨芽細胞様に変化することが関係していると報告されている.近年,Schlieperらの尿毒症における血管石灰化の超微細構造解析の報告によると,X線で石灰化を認めない状態でも尿毒症における動脈微小石灰化はナノ結晶より生じており,アポトーシス小体または基質小胞体由来を示唆するコアーシェル構造を有する場合が多いことが明らかにされた.また,微小石灰化巣で,fetuin - A,オステオポンチン,matrix Gla proteinなどの石灰化抑制因子が発現していることも確認されている.血管石灰化は,生命予後規定因子のひとつであり,主に血清P値によって規定されるが,透析患者の場合には年齢および透析期間も増強因子として重要である.心腎連関においては,大動脈の石灰化は動脈硬化による後負荷を増強させ左室拡張能障害に関与する.石灰化の進展抑制および予後に関与する因子として,透析患者の場合にはビタミンDの関与が示唆されている.ビタミンDの投与は,増加すると血清Caおよび血清Pの上昇に伴う石灰化の増強を認めるが,活性型ビタミンDの少量の経口投与は,血管石灰化抑制を認めることをわれわれは報告している.さらに,Ca・P代謝に関与しているfibroblast growth factor-23(FGF -23),klothoが血管石灰化に関与していることが示されている.CKDでは,Pの蓄積を防ぐためにFGF -23分泌が亢進しており,透析患者では,非透析患者と比較してFGF -23は100倍以上高値であると報告されている.また,CKDにおける1,25(OH)2D低下には血中P上昇によるFGF -23上昇が大きく関与している可能性が考えられている.Klothoは,老化に関与するタンパクとして考えられているが,それは,klothoのノックアウトマウスが血管石灰化や骨病変,寿命の短縮など老化の表現型を示すことからklothoタンパクは抗老化に働き,さらに軟部組織の石灰化を抑制する.臨床的な石灰化評価法は,腹部単純CTによる腹部大動脈の大動脈石灰化指数,multi -detector CT(MDCT)による冠動脈石灰化指数(Agastonスコア),また,単純X線では大動脈弓部石灰化評価や腹部大動脈石灰化評価,骨盤部石灰化評価においていずれも心血管系死亡の有意な予後予測因子である.特に単純X線での評価は低侵襲で簡便な方法であり,有用性が高いと考える.Current Therapy 2012 Vol.30 No.8 125853