カレントテラピー 30-8 サンプル

カレントテラピー 30-8 サンプル page 22/28

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 30-8 サンプル の電子ブックに掲載されている22ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患中心動脈圧埼玉医科大学地域医学・医療センター講師大野洋一心腎連関を検討するうえで,中心血圧を評価して診療に活かす試みが始まっている.残4 4 4念な....

心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患中心動脈圧埼玉医科大学地域医学・医療センター講師大野洋一心腎連関を検討するうえで,中心血圧を評価して診療に活かす試みが始まっている.残4 4 4念ながら現時点では中心動脈圧と心腎連関に関する大規模臨床研究の成果は蓄積されていない.しかし,心腎連関の病態を理解するうえで中心血圧は根幹的な要因となる.なぜなら,主要臓器の還流は中心血圧によって一義的に決定されるからである.例えば,冠動脈血流には大動脈の拡張期圧が重要である.また,腎動脈圧と腎静脈圧の差が腎還流を規定している.近年,心不全での腎機能保持のために中心4 4 4静脈圧を10mmHg未満に下げることの重要性が報告されてきた.腎静脈圧の上昇は間質のうっ血により,尿細管の酸素欠乏をきたし,急性尿細管壊死に至らしめる.急性の病態で尿量が確保できない状況では早期に腎代替療法を開始し,循環血液量を適正に保つことが不可逆性腎不全を防ぐ手段として期待されている.一方,慢性の病態においても減塩と利尿薬の適切な調節でうっ血を除去することが心腎症候群の悪循環を遮断するために有用と考えられる.4 4 4中心静脈圧の低下に専心するあまり,中心4 4 4動脈圧の過剰な低下をきたしている症例に遭遇することがある.例えば,急性の病態では4 4 4治療により中心静脈圧が2mmHgまで低下し,上腕動脈の収縮期血圧を80mmHgに維持で4 4 4きたとしても中心動脈圧が低い場合がある.動脈硬化が進んだ高齢者においては,末梢では駆出波と反射波が重なり末梢動脈圧が中心4 4 4動脈圧よりも,見掛け上より高くなるため注意が必要である.このような状況では,腎糸球体毛細管静水圧は低下するものの,腎糸球体輸入輸出細動脈圧格差が確保されず,そのうえ1回心拍出における還流時間が短く,糸球体濾過は不十分となり,尿量の回復を遅延させてしまう.さらに,敗血症などで急性炎症を合併した場合は間質への透過性が一層亢進し有効循環血液量を保持しにくくなるため,増悪期には間質のうっ血に留意し,回復期には腎還流に必要な有効循環血液量を確保する必要がある.一方,慢性心不全においては,概して減塩が不十分かつ利尿薬の増量が遅れ4 4 4がちなため,中心静脈圧が高めになりやすい.4 4 4中心静脈圧の軽度の上昇も酸化ストレスを介して腎の慢性炎症・線維化を促進する要因となるため腎機能障害の進展要因となる.また,慢性腎臓病ではレニン・アンジオテンシン系や酸化ストレス系の亢進を介して,動脈硬化4 4 4が促進され中心動脈圧の上昇をきたし,心血管病発生の素地を形成することとなる.このように,心腎連関においては中心血圧を意識した病態の把握が必要であり,さらに病期に応じた体液のバランスを考慮した治療が必要となる.今後,臨床研究の蓄積により適正な中心血圧値(動脈圧と静脈圧)が少しずつ明らかにされることを期待したい.124 Current Therapy 2012 Vol.30 No.8852