カレントテラピー 30-8 サンプル page 17/28
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概要:
心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患直接的レニン阻害薬a b s t r a c t*1*2福田誠一・佐藤敦久新しいRA系抑制薬として直接的レニン阻害薬のアリスキレンが開発され,降圧薬としてわが国で....
心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患直接的レニン阻害薬a b s t r a c t*1*2福田誠一・佐藤敦久新しいRA系抑制薬として直接的レニン阻害薬のアリスキレンが開発され,降圧薬としてわが国でも臨床的に使用できるようになった.アリスキレンは十分な降圧効果と持続性をもっており,また腎臓や心臓などの臓器保護効果も期待されている.欧州高血圧学会(ESH)2009ガイドライン(改訂)ではアリスキレンを高血圧治療に用いるのは妥当であり,特に他の降圧薬との併用が有用であるとしている.アリスキレンの忍容性が高いこともこのことを支持している.今後,アリスキレン単独使用や他のRA系抑制薬との併用を行うにあたり,適した病態や禁忌などアリスキレンの正しい位置づけが日本においても重要となる.臨床試験などの結果を待ち,特にRA系抑制薬との併用などは慎重に考えていく必要がある.Ⅰはじめにレニン・アンジオテンシン系(RA系)は循環RA系,組織RA系として血圧・電解質調節,心・腎・血管病変の発症,リモデリングなどに重要な役割を担っている.RA系を抑制することは高血圧治療の重要なターゲットであり,さらに心・腎などの臓器保護効果も期待できる.RA系抑制薬としてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が汎用されており,さらにミネラロコルチコイド受容体拮抗薬(MRB)も使用されている.一方でRA系の最上流にあるレニンを阻害する薬剤は長年開発を試みられるも困難であった.2003年にアリスキレンが開発され,有効性・安全性が確認されたことでわが国でも2009年10月より使用可能となった.本稿では,直接的レニン阻害薬について概説する.Ⅱレニン・アンジオテンシン系レニンは循環血漿量および塩分の減少や交感神経の活性に反応して,腎傍糸球体細胞から分泌されるアスパラギン酸プロテアーゼに属するRA系カスケードの律速酵素である.レニンは肝臓などで合成されたアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠを合成する.直接的レニン阻害薬はレニン活性部位に結合することでアンジオテンシンⅠへの変換作用を阻害する(図).その結果,血漿レニン濃度は上昇するが,血漿レニン活性は低下するため,アンジオテンシンⅠ,アンジオテンシンⅡ,アルドステロンも低下する.一方で,他のRA系抑制薬であるACE阻害薬,ARB,MRBによる血漿レニン濃度,血漿レニン活性,アンジオテンシンⅠ,アンジオテンシンⅡ,アルドステロンの変化は異なっており,表にその違いを示す.なお,直接的レニン阻害薬は*1国際医療福祉大学三田病院内科*2国際医療福祉大学三田病院内科部長94Current Therapy 2012 Vol.30 No.8822