カレントテラピー 30-8 サンプル page 15/28
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心腎連関に対する治療戦略病態には適しているのか.現在までにACE阻害薬vs. ARBといった臨床試験は心腎連関により生じている病態に対しては行われていない.一方,微量アルブミン尿に関しては,ARBでは数多くの試験....
心腎連関に対する治療戦略病態には適しているのか.現在までにACE阻害薬vs. ARBといった臨床試験は心腎連関により生じている病態に対しては行われていない.一方,微量アルブミン尿に関しては,ARBでは数多くの試験が行われているのに対し,ACE阻害薬では比較的報告が少ない.これは,時代的に微量アルブミン尿が話題とされたのがARBの発売とほぼ一致していたこともひとつの原因と考えられる.ARBに関しては,微量アルブミン尿および左心室肥大に対しては,大規模臨床試験でその効果がほぼ証明されている.ここでひとつの問題として,心腎連関において心臓と腎臓と標的臓器が異なっている時に同じ投与量でよいのかといったことが今まではあまり議論されてこなかった.例えば,タンパク尿を減らすには比較的大量のARBがよいとする説がある一方で,腎機能障害が進行していくと大量のARBは時に障害性に働くといった考え方も出されている.さらにARBの多くは胆汁排泄であるが,ACE阻害薬の多くは腎排泄である.つまり腎機能障害が認められる場合は,ACE阻害薬は必ずしも使いやすいとはいえない.またここ10年のACE阻害薬とARBの併用について,あるいはARB+DRIの併用がよいのではという考え方からいくつかの臨床試験が行われてきたが,その結果は予想に反しており,むしろ併用療法を否定するような結果が出されている.このことはRAA系抑制薬の使い方にひとつの見識を与えるものではないかと思われる.動物実験でRAA系抑制薬の大量投与によって効果を示すということが,必ずしもヒトでは当てはまらない.むしろ十分な注意が必要であることを示唆している.では今後どのような使い方がよいのか.これは恐らく個々の症例でのまさにテーラーメイドの医療が要求され,そのなかでもRAA系抑制薬をいかに上手く用いるかが鍵となる.3交感神経抑制薬交感神経抑制薬の心腎連関に果たす役割については十分な検討はなされていない.特にα1遮断薬がALLHAT試験で否定的なデータが出されたためにその後ほとんど臨床現場の表舞台からは消えてしまった感がある.しかしα1遮断薬もしくはα1β遮断薬は心腎連関では有効な働きを示すことが考えられる.特にα1β遮断薬であるカルベジロールとアロチノロール,特にカルベジロールは大規模臨床試験でも心不全に対する有効性が証明されている.したがって心不全や比較的頻脈の傾向にある場合にはα,β遮断薬は有効である可能性が高い14).Ⅴ高血圧を基礎とした心腎連関に新たな病態が加わりつつある最近日本人の疾病構造が大きく変化し,従来述べてきたように高血圧が基礎疾患として左心室肥大,腎硬化症というひとつの連関が想定されてきた.しかしそのような枠では現在の日本人の疾患を述べることは難しくなってきている.すなわち,メタボリックシンドロームに代表される肥満を主体とする病態,さらに脂質異常症として総称されるリポトキシティーによる疾患が加わったため,病態がより複雑化している.すなわち,従来は高血圧のみに,あるいは脂質異常症のみに,またはメタボリックシンドロームのみにといった形で各疾患があたかも独立しているかのように論じられてきたが,本邦のここ10年間における疾病の動きをみるとそれぞれが独立しているのではなく複雑に絡み合って形成されていることがわかる.Ⅵ高血圧を基礎とした心腎連関の実態ここにわれわれが以前に報告した高血圧を基礎とする心腎連関の症例検討に近い臨床研究を紹介する15).患者の内訳は表に示すとおりで,心疾患としては単純な左心室肥大から冠動脈疾患,弁膜疾患があり,腎疾患としては腎硬化症をはじめ糸球体腎炎も含まれている.これらが複雑に連関し,心腎連関という病態をつくり上げている.この研究ではこれらを2群に分け,降圧療法の差がなんらかの相違を生じるかどうかを検討し,1群は130/85mmHg前後へ,2群は120/80mmHgを目標に降圧治療を行った.このような微妙な差を降圧治療で引き出すのは実臨床ではなかなか難しい.しかし今回の成績では血圧Current Therapy 2012 Vol.30 No.878557