カレントテラピー 30-8 サンプル

カレントテラピー 30-8 サンプル page 10/28

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概要:
心腎連関の病態果たしているとは考えられていなかった.最大の理由は,糸球体内皮細胞が有窓性内皮細胞(fenestrated endothelium)だからである.糸球体内皮の総面積の20~50%がfenestraeで占められている.Fenest....

心腎連関の病態果たしているとは考えられていなかった.最大の理由は,糸球体内皮細胞が有窓性内皮細胞(fenestrated endothelium)だからである.糸球体内皮の総面積の20~50%がfenestraeで占められている.Fenestraeの直径は約60nmであり,アルブミン程度のmacromoleculeは容易に通過し得ると考えられていた.しかしながら,糸球体内皮細胞も基底膜,上皮細胞スリット膜と並んで,濾過障壁として一定の役割を果たしていると認識されつつある13).内皮細胞表層およびfenestra内は多糖類層(glycocalyx)で被覆されている.そのため微量アルブミン尿を呈する糖尿病患者では,この内皮細胞層のglycocalyxが減少していることが示された14).興味深いことに,糖尿病腎組織ではglycocalyxの構成成分であるヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解酵素であるheparanase発現の亢進が報告されている15).2)糸球体内皮(機能)障害,微小炎症,酸化ストレスの関与臨床例を用いて糸球体内皮障害を解析することは現時点では不可能である.CKDモデル動物を用いた解析によって,糸球体内皮(機能)障害,微小炎症,および酸化ストレスが複合的に作用しアルブミン尿出現のメカニズムとなっていることが明らかになった.内皮細胞は多彩は機能を有しているが,NO産生はその中核をなしている.糖尿病,メタボリックシンドロームモデルにおいて,糸球体内皮細胞におけるNO産生異常・NO bioavailability低下が生じており,NO産生酵素(endothelial NO synthetase:eNOS)の機能異常(uncoupling)が関与することが示された.また,CKDでは糸球体内において主にNAD(P)Hオキシダーゼ活性化に由来する酸化ストレス亢進状態があり,そのためにeNOSの補酵素であるBH4が酸化・減少する16),17).CKDにおけるNOSの機能異常はBH4低下以外の原因によっても生じ得る.asymmetric dimethylarginine(ADMA)はNOSの阻害活性をもつ内因性物質であるが,腎代謝を受けるため,腎機能低下時の内皮機能障害の原因の一部を形成していることが示唆されている18).各種のCKDモデル糸球体においてNO/酸化ストレスの著しい不均衡が生じていることが示されている.酸化ストレスによりredox依存性に活性化される転写因子Etsを介してheparanase発現が亢進し,さらにglycocalxが減少し,アルブミン尿が生じることも報告されている19).3)腎内血行動態異常(糸球体高血圧),内皮障害とアルブミン尿糖尿病,肥満,メタボリックシンドロームを基盤とするCKDでは,アルブミン尿出現以前から,糸球体高血圧が出現しており,これを反映して組織学的にも糸球体肥大を認める.糸球体高血圧と内皮機能障害の両者が存在するとアルブミン尿が容易に出現することが示されている.またストレプトゾトシン(streptozotocin:STZ)で誘導される糖尿病モデルでは,糸球体高血圧(過剰濾過)は早期から出現するものの,アルブミン尿は容易に出現しない.逆に内皮機能障害モデルでもあるeNOS遺伝子欠損動物では内皮機能障害は認められるが,やはりアルブミン尿は容易に出現しない.しかし,eNOS遺伝子欠損動物にSTZ糖尿病モデルを作成すると,早期から大量のアルブミン尿が出現することが示された20).Ⅴおわりに微量アルブミン尿の下限閾値以下の極微量域から,アルブミン尿はCVD発症と強く連関することが明らかになった.しかも血圧値同様に尿中アルブミン排出量に依存して,連続的にリスク度が亢進する.早期であれば治療介入により,正常化・寛解が期待できることも明らかになっている.生活習慣病全般を対象として,日常臨床の現場でCVDのリスク度を定量する指標としてアルブミン尿の測定が可能となることが望まれる.参考文献1)de Jong PE, Curhan GC:Screening, monitoring, and treatmentof albuminuria:Public health perspectives. J Am SocNephrol 17:2120-2126, 20062)Miller WG, Bruns DE, Hortin GL, et al;National Kidney Dis-Current Therapy 2012 Vol.30 No.874113