カレントテラピー 30-7 サンプル page 24/30
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概要:
糖尿病性神経障害の治療薬弘前大学大学院医学研究科分子病態病理学教授八木橋操六1はじめに下肢のしびれ,痛みなどの感覚異常を特徴とする感覚運動神経障害と血管や内臓器官などの調節異常を起こす自律神経障害を含....
糖尿病性神経障害の治療薬弘前大学大学院医学研究科分子病態病理学教授八木橋操六1はじめに下肢のしびれ,痛みなどの感覚異常を特徴とする感覚運動神経障害と血管や内臓器官などの調節異常を起こす自律神経障害を含めて一般に糖尿病性(多発)神経障害という.疼痛などの陽性症状には苦痛を取り除くための対症療法が必要となる.一方,感覚鈍麻など患者が訴えない陰性症状にはそれを進行させないこと,足潰瘍,壊疽の予防,管理が必須となる.立ちくらみなどの自律神経障害の症候の出現はQOL低下と生命予後の悪化を示す徴候である.全身管理とともに神経障害をより悪化させないことが肝要となる.すなわち,糖尿病性神経障害への対処には,陽性症状に対する対症療法と,病期を進展させないための根本的療法に分けられる.2糖尿病性神経障害の対症療法近年,相次いで疼痛への新しい治療薬が出現し,選択肢が拡がった.抗けいれん薬でCaチャネル阻害薬のプレガバリンとセロトニン・ノルアドレナリンの再取り込み阻害薬のデュロキセチンはほぼ同等の効果を示すように思われる.いずれもふらつきや転倒の危険性を孕むことから,少量から注意深く効果が出るまで増量する.一般に,プレガバリンでは就寝前25mgから開始し300mg/日までの増量で十分効果が得られる.デュロキセチンでは20mgから40mg/日で効果がみられる.古典的には,三環系抗うつ薬のアミトリプチリンやイミプラミンが用いられてきた.一方,抗けいれん薬のカルバマゼピンなども有効である.治療後神経障害のように,比較的早期,急性の疼痛にはメキシレチン(メキシチールR)のようなNaチャネル遮断薬も有効といわれる.ただし,心機能の悪い患者では不整脈の危険性もあるため注意を要する.3糖尿病性神経障害の根本的療法神経障害の治療として不可欠なのが,成因に基づく根本的療法である.長期にわたる安定した血糖コントロールが重要である.血糖コントロールの指標として,HbA1c(NGSP値)6.5%を目標とするのが現実的である.DCCT,UKPDSのデータからみるとHbA1cが1%上昇することにより神経障害の頻度が5%上昇する.ただし,厳格な血糖管理のために,低血糖を頻発すると神経障害が悪化する可能性もある.アルドース還元酵素阻害薬は早期例,血糖コントロールが比較的よい例で神経障害の進展を抑制できると報告されている.しかしながら,HbA1cが9%(JDS値)では神経障害の進展を抑制できないことも示されている.したがって,早期無症候性の神経障害に投与し,症候性にならないようにするのが現実的な対応となる.ビタミンB12製剤(メコバラミン)は古くから用いられている薬剤である.実験的には,糖尿病神経でのNa+K+-ATPase活性,プロテインキナーゼC(PKC)の改善や神経伝導速度の改善をみている.しかしながら,臨床的に神経障害を有意に抑制したという根拠は得られていない.116 Current Therapy 2012 Vol.30 No.7706