カレントテラピー 30-7 サンプル page 22/30
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糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望薬剤による1型糖尿病の予防埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科教授粟田卓也1型糖尿病の多くは自己免疫機序による膵β細胞の破壊により発症する糖尿病である.若年で急性に発症す....
糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望薬剤による1型糖尿病の予防埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科教授粟田卓也1型糖尿病の多くは自己免疫機序による膵β細胞の破壊により発症する糖尿病である.若年で急性に発症する「典型的」1型糖尿病が多い欧米では,その発症および進展を阻止する介入試験が盛んに行われてきた.1型糖尿病の予防は,大きく抗原特異的免疫療法,抗原非特異的免疫療法,膵β細胞を温存する治療の3つに分けられる.抗原特異的免疫療法としては,インスリンとグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic aciddecarboxylase:GAD)によるトライアルが行われてきた.インスリンについては,大規模臨床試験DPT -1において非経口投与(皮下注射/静脈内投与)および経口投与の発症遅延効果は認められず,経鼻インスリンによるトライアルも無効であった.一方で,日本で行われた緩徐進行1型糖尿病(インスリン非依存状態のGAD抗体陽性患者)を対象に,インスリン皮下注射とスルホニル尿素薬投与を比較したTokyo Studyでは,インスリンによる有意な進展抑制効果が認められた.GADについては水酸化アルミニウムをアジュバントとして投与され(GAD -alum),第Ⅱ相試験では有望な結果が得られたが,残念ながら第Ⅲ相試験では効果は認められなかった.抗原非特異的免疫療法としては,古くはシクロスポリン,アザチオプリンなどが試みられたが長期的には無効であり,最近では,T細胞を標的としたCD3抗体療法(teplizumab,otelixizumab),B細胞を標的としたCD20抗体(リツキシマブ),T細胞の副刺激分子を標的としたCTLA4-Ig(アバタセプト)などのトライアルが行われている.これらの薬剤は第Ⅱ相試験では一定の効果が得られたものの,最近結果が報告されたCD3抗体療法の第Ⅲ相試験では無効であった.膵β細胞を温存する治療としては,古くは大規模臨床試験ENDITにおいてニコチナマイドの効果が検討されたが無効であった.最近では,インクレチン関連薬であるDPP -4阻害薬やGLP -1アナログ(GLP -1受容体作動薬)が1型糖尿病の予防において注目されている.GLP -1やGLP -1受容体作動薬には膵β細胞温存作用とともに免疫修飾作用(末梢の制御性T細胞の維持や,炎症性サイトカインの抑制)が認められており,DPP -4阻害薬にも免疫修飾作用(制御性T細胞の増加,CD4陽性T細胞の遊走阻止,免疫制御サイトカインTGF -β1の分泌促進)が認められている.われわれは,インスリン非存状態にある緩徐進行1型糖尿病におけるDPP -4阻害薬の効果を検討する臨床研究を施行しており(Study for Prevention of AutoimmuneNon -insulin -dependent diabetes mellituswith Sitagliptin:SPAN -S),GLP -1受容体作動薬であるリラグルチドについても同様の臨床研究を計画している.多くのトライアルにもかかわらず,いまだヒト1型糖尿病の予防に際立った効果が認められた薬剤はない.主として優れた自然発症モデルであるNODマウスにおいて効果を認114 Current Therapy 2012 Vol.30 No.7704