カレントテラピー 30-7 サンプル page 10/30
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糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望スルホニル尿素薬と速効型インスリン分泌促進薬*1*2*3東海林忍・中﨑満浩・石原寿光a b s t r a c tスルホニル尿素(sulfonylurea:SU)薬と速効型インスリン分泌促進薬(....
糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望スルホニル尿素薬と速効型インスリン分泌促進薬*1*2*3東海林忍・中﨑満浩・石原寿光a b s t r a c tスルホニル尿素(sulfonylurea:SU)薬と速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)は,経口インスリン分泌促進薬に分類され,なかでもSU薬は2型糖尿病治療に長年広く用いられてきた薬剤である.SU薬がわが国の2型糖尿病治療で頻用されている背景として,欧米人糖尿病患者は,平均body mass index(BMI)が30kg/m 2以上と肥満体型でインスリン抵抗性を主とするのに比べ,日本人糖尿病患者は平均BMI 23~24kg/m 2と低く,インスリン分泌障害を主とする場合が多いことが挙げられる.グリニド薬はSU薬と比較して,吸収が早く血中半減期が短いため,インスリン上昇のスピードが速く,インスリンの分泌時間が短い.そのため,血糖降下作用はより速やかに発現し,作用時間も短い.食後高血糖の是正に適し,抗動脈硬化作用なども報告されている.本稿では,SU薬,グリニド薬の膵β細胞インスリン分泌機序に関して,最新の知見を含め概説する.Ⅰスルホニル尿素(sulfonylurea:SU)薬1 SU薬の作用機序スルホニル尿素(sulfonylurea:SU)薬は単剤での使用で最も血糖降下作用が強い経口糖尿病薬である1).また長期間臨床の場で使用され細小血管症抑制のエビデンスがあるため,年齢,体重を問わず第1選択薬として有用とされてきた2).SU薬の受容体はアデノシン三リン酸(ATP)感受性K +チャネルの一部を構成し,SU薬が受容体に結合するとチャネルが閉鎖し,膜電位が脱分極して電位依存性Ca 2+チャネルが開口する.すると細胞外から細胞内へCa 2+が流入し,インスリン分泌の引き金となる(図).SU受容体にはサブタイプがあり,膵β細胞(スルホニル尿素受容体1型:SUR 1),心筋(SUR 2A),平滑筋(SUR 2B)から構成されタイプが異なる.SU薬の構造の違いによってSU受容体に対する親和性が異なり,作用力価の違いが生じる3).最近,一部のSU薬(トルブタミドおよびグリベンクラミド)が,インクレチンなどによるインスリン分泌増幅経路である環状アデノシン一リン酸(cAMP)依存性インスリン分泌経路のなかの特にプロテインキナーゼA(PKA)非依存性調節性分泌に関与するEpac2(cAMP-GEFⅡ)に直接結合し,低分子量Gタンパク質Rap 1を活性化することでインスリン分泌を惹起することが報告され,新たなSU薬の作用機序として注目されている4).2 SU薬の適応と使用法SU薬は一般にインスリン非依存状態で十分な食事,運動療法を行っても良好な血糖コントロールが得られない糖尿病患者が適応となる.また作用機序により,膵β細胞に残存機能がある場合が適応とな*1日本大学医学部内科学系糖尿病代謝内科学分野助手*2日本大学医学部内科学系糖尿病代謝内科学分野准教授*3日本大学医学部内科学系糖尿病代謝内科学分野教授34Current Therapy 2012 Vol.30 No.7624