カレントテラピー 30-6サンプル page 7/30
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概要:
よって,産生と除去のバランスが崩れることで酸化ストレスが生じる.酸化ストレスはさまざまな疾患の発症や進展に関与することが報告されており,糖尿病や動脈硬化,非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcohlicsteatohep....
よって,産生と除去のバランスが崩れることで酸化ストレスが生じる.酸化ストレスはさまざまな疾患の発症や進展に関与することが報告されており,糖尿病や動脈硬化,非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcohlicsteatohepatitis:NASH)に関して多くの報告がある.Ⅲ脂肪組織における酸化ストレスの増加酸化ストレスが,肥満やインスリン抵抗性,低アディポネクチン血症などのメタボリックシンドロームの病態に深く関連することは多くの研究者から報告されている.Framingham studyでは,全身性の酸化ストレス指標として尿中8-epi -PGF2αを測定し,body mass index(BMI)と相関することを報告している1).われわれは,CTによって内臓脂肪面積(visceral fat area:VFA)と皮下脂肪面積(subcutaneousfat area:SFA)を測定し,酸化ストレス指標である尿中8-epi -PGF2αがVFAと関連することを報告した2).さらに,多変量解析の結果では,内臓脂肪蓄積は全身の酸化ストレスの独立した危険因子であった2).また,インピーダンス法によってVFAを測定し,ROS指標として血中過酸化脂質(thiobarbituric acid reactive substance:TBARS)を解析した結果では,動脈硬化の危険因子保有数は,血中TBARSとVFAに相関しており,血中TBARSと血中アディポネクチン濃度は逆相関していた3).同様に血中TBARSは,超音波で測定した内臓脂肪厚と有意に相関することも報告されている4).このように,メタボリックシンドロームでは全身性の酸化ストレスが増加した状態となっている.われわれの解析では,肥満モデルマウスにおいても血中TBARSとH2O2産生量は増加しており5),脂肪組織ではROS産生酵素であるNADPHオキシダーゼを構成するサブユニットの発現量が増加し,カタラーゼ,Cu,Zn-SOD,グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)などの抗酸化酵素の遺伝子発現量や活性は低下している.これらの変化は肝臓や筋肉では認められず,TBARSの増加と一致しており,脂肪組織に特異的な変化である.したがって,肥満に伴う全身性の酸化ストレス増加には,脂肪組織からのROS増加が大きく寄与している.肥満脂肪組織における酸化ストレスの発生源として,マクロファージと脂肪細胞の2つが想定される.肥満脂肪組織にはマクロファージが浸潤しており6),活性化したマクロファージはROSを大量に産生する.一方で,脂肪細胞もROSを産生することが報告されている.培養細胞では,脂肪細胞への分化に伴ってROS産生が増加する5).また,培養脂肪細胞に遊離脂肪酸やTNF-α,グルココルチコイド,グルコース,インスリンなどを添加して生体内の肥満を模倣した状態にすると,ROS産生が増加する5),7)~9).また,ROS自体が脂肪細胞のNADPHオキシダーゼやPU.1の遺伝子発現を増加させることで,さらなるROS産生の増加を誘導する.さらに,ROSはマクロファージの遊走を促すMCP -1の発現を増加させ,ROSによって生成される過酸化脂質もマクロファージの遊走を促進する.以上のことから,肥満脂肪組織ではマクロファージと脂肪細胞の両者の相互作用によって酸化ストレスが生じると考えられる(図).Ⅳ酸化ストレスの作用酸化ストレスは脂肪細胞のインスリンシグナルとアディポサイトカイン発現の両者に作用する(図).脂肪細胞はROSによってインスリンシグナルが抑制され,脂肪合成と糖取り込みが障害される10),11).その機序は,酸化ストレスで活性化されるストレス応答MAPキナーゼによる直接的な作用と,炎症性サイトカイン産生を介した間接的な作用によってIRSタンパクが分解され,インスリンシグナルが障害されることである.さらに,TNF -αやグルココルチコイドはインスリン抵抗性を惹起するが,これらの作用にもROS産生の増加が関与している7).すなわち,脂肪細胞で発生した酸化ストレスはインスリン感受性を低下させる作用をもつ.脂肪細胞からはアディポサイトカインが分泌されており,アディポサイトカインの産生異常は炎症作Current Therapy 2012 Vol.30 No.64919