カレントテラピー 30-6サンプル page 6/30
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概要:
肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平脂肪組織の酸化ストレスと肥満*1*2*3福原淳範・大月道夫・下村伊一郎メタボリックシンドロームは,内臓脂肪の蓄積に伴って耐糖能異常や脂質異常症....
肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平脂肪組織の酸化ストレスと肥満*1*2*3福原淳範・大月道夫・下村伊一郎メタボリックシンドロームは,内臓脂肪の蓄積に伴って耐糖能異常や脂質異常症,高血圧が集積した疾患概念であり,動脈硬化性疾患の危険性が高い.肥満脂肪組織では脂肪細胞の肥大とマクロファージの集積から慢性炎症状態となっており,脂肪組織における活性酸素種の増加が病態の上流因子として重要である.血中および尿中酸化ストレス指標は内臓脂肪面積と相関しており,血中アディポネクチンとは負に相関する.酸化ストレスはインスリン抵抗性とアディポサイトカイン産生異常を引き起こし,メタボリックシンドロームの病態を形成する.活性酸素種産生酵素の阻害や抗酸化酵素を発現誘導する薬剤は,メタボリックシンドロームの病態を改善することが期待される.Ⅰはじめに肥満は,インスリン抵抗性や耐糖能異常,脂質異常症,高血圧と密接に関連しており,メタボリックシンドローム発症の基盤となる状態である.肥満に伴う脂肪組織の炎症には,マクロファージの浸潤が重要な役割を果たすと考えられている.このような脂肪組織ではTNF -αやIL -6などのサイトカインだけでなく,活性酸素種の産生が亢進することで炎症反応やアディポサイトカインの産生異常が誘導され,全身性のインスリン抵抗性が発症する.本稿では肥満における脂肪組織の酸化ストレスについて,最近の知見を中心に概説する.Ⅱ酸化ストレス酸化ストレスとは,生体内で活性酸素種(reactiveoxygen species:ROS)による酸化作用と還元作用のバランスが崩れ,酸化作用が増加した状態である.ROSには酸素ラジカル(O2-)や過酸化水素(H2O2),ヒドロキシラジカル(・OH)などがあり,NADPHオキシダーゼやキサンチンオキシダーゼ,ミトコンドリア呼吸鎖酵素などで産生される.ROSはきわめて反応性に富み,生体の構成成分であるタンパク質,脂質,DNAを直接的に障害する.また,酸化還元感受性の転写因子であるNFκBやAP -1を活性化すること,ストレス応答MAPキナーゼを活性化することで,間接的に細胞機能障害をもたらす.生体には抗酸化酵素や抗酸化物質による抗酸化システムが存在し,ROSを速やかに除去することができる.しかし,ROSの過剰な産生や抗酸化システムの抑制に*1大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学助教*2大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学講師・外来医長*3大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学教授8Current Therapy 2012 Vol.30 No.6490