カレントテラピー 30-6サンプル page 4/30
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概要:
肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平―企画慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授伊藤裕肥満症における「脂肪vs.腸管」に関する考察肥満症研究において,「内臓脂肪」および脂肪細胞....
肥満症の病態と治療に関する最近の知見―肥満症医療の新しい地平―企画慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授伊藤裕肥満症における「脂肪vs.腸管」に関する考察肥満症研究において,「内臓脂肪」および脂肪細胞から分泌される「アディポサイトカイン」の重要性の発見は,まさにその白眉であった.そして,肥満を起点とするメタボリックシンドロームは,広く一般国民の常識となった.しかし,その撲滅には,「肥満治療」というきわめて高いハードルが立ちはだかっている.ありきたりの病と思われている「肥満症」は実は難治性疾患であった.今,「肥満そのもの」をターゲットにした新規治療オプションが希求されている.本書は,世界の肥満研究の旗手であるわが国の最先端医学者から「近未来の肥満治療」の提言をいただくことを目的に編まれた.肥満は,カロリーバランス変調による脂肪細胞での余剰エネルギーの蓄積に基づく病態であるが,今では,レプチンやアディポネクチン,脂肪細胞由来ステロイドなどのアディポサイトカインの分泌異常による内分泌疾患としてとらえられている.また,脂肪細胞の内分泌機能を障害する原因として,脂肪組織炎症が脚光を浴びている.したがって,その治療オプションとしては,レプチン抵抗性解除,アディポネクチンmimetics,脂肪組織炎症抑制などが提案されている.腸管から分泌されインスリン分泌を促進するインクレチンの関連薬剤の登場が,糖尿病治療を一新した事実,また減量手術による腸管バイパスが肥満,さらに糖尿病治療においても劇的な効果を生んでいる事実より,今私は「腸管」に熱い視線を注いでいる.アディポサイトカインは,カロリー摂取過多の結果,いわば後づけ,フィードバック的に分泌が制御される.一方,腸管ホルモンは,食物の消化管通過をプライマリの刺激として,動的に分泌され,フィードフォワード的にエネルギー代謝制御にかかわっている.いわば,アディポサイトカインは,“肥満の結果”分泌されるのに対し,腸管ホルモンは,“肥満の原因”により分泌される.内臓脂肪炎症とその内分泌機能異常も,私は,摂食過多による腸管免疫の活性化に由来する炎症の結果であると考えている.最近,エネルギー代謝における臓器連関の重要性が脚光を浴びているが,その基盤には内臓神経(vagal afferent)が存在する.末梢神経の半数以上は実は腸管に存在し,食物の通過をリ6Current Therapy 2012 Vol.30 No.6488