カレントテラピー 30-6サンプル

カレントテラピー 30-6サンプル page 26/30

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脂肪組織ステロイド琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)教授益崎裕章ステロイドホルモンは,副腎皮質ホルモンと性ホルモンの総称である.ステロイドホルモンの作用異常は種々の....

脂肪組織ステロイド琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)教授益崎裕章ステロイドホルモンは,副腎皮質ホルモンと性ホルモンの総称である.ステロイドホルモンの作用異常は種々の副腎疾患,間脳・下垂体疾患,性腺疾患の病態に関与するのみならず,肥満症,脂質異常症,糖尿病,高血圧症,骨粗しょう症に代表されるcommon diseaseの病態や治療法を考えるうえでも欠くべからざる重要な位置を占めている.肥満症とのかかわりでは脂肪細胞にミネラロコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR),グルココルチコイド受容体(glucocorticoidreceptor:GR),レニン受容体,アンジオテンシンⅡ受容体などが発現しており,ステロイドホルモンによる脂肪細胞の機能調節異常が脂質異常症,糖尿病,高血圧症,動脈硬化症,メタボリックシンドロームの発症や進展にかかわることが注目されている.細胞のなかにおいてグルココルチコイドの再活性化を担う酵素,11β-hydroxysteroid dehydrogenase1(11β-HSD1)の発現や酵素活性は肥満の脂肪組織において上昇しており,インスリン抵抗性や脂質・糖代謝パラメーターの悪化と相関を示す.脂肪組織における11β-HSD1の過剰な活性化はストレス誘導性肥満の病態とも密接に関連しており,脂肪組織11β-HSD1(アディポステロイド)は過栄養とストレスで活性化される生活習慣病の誘発因子ととらえることもできる.11β-HSD1の発現は脂肪細胞の機能や分化を調節するマスター遺伝子(転写因子)であるPPARγによって強力に抑制されるが,肥満の脂肪組織では,とりわけ内臓脂肪組織においてPPARγの活性が低下しているために,PPARγによる抑制が解除された11β-HSD1の発現や活性は,特に内臓脂肪組織で顕著に上昇している.肥満の脂肪組織における11β-HSD1の過剰な活性化はアディポカインの分泌調節異常や酸化ストレス,炎症など一連の脂肪組織の機能異常を引き起こす.チアゾリジン誘導体による脂肪組織PPARγの活性化は貯蓄遺伝子としてのPPARγの本来の作用を回復させて非脂肪組織に蓄積された中性脂肪を皮下脂肪組織に動員するとともに,過剰に活性化された11β-HSD1作用を正常化する役割も果たしている.欧州や米国で行われた11β-HSD1阻害薬の臨床試験では2型糖尿病改善効果における優れたproofof concept(POC)が得られており,心血管イベント抑制効果や降圧作用を併せもつ新しいタイプの2型糖尿病治療薬としての開発が期待を集めている.Current Therapy 2012 Vol.30 No.657189