カレントテラピー 30-6サンプル

カレントテラピー 30-6サンプル page 20/30

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概要:
されている.GIP遺伝子から転写・翻訳されたGIP前駆体から切断されて出来上がった42個からなるペプチドが活性型GIPであり,生体内で生理活性を発揮している.GIPは,食物摂取後,食物中に含まれる脂肪や糖質により分....

されている.GIP遺伝子から転写・翻訳されたGIP前駆体から切断されて出来上がった42個からなるペプチドが活性型GIPであり,生体内で生理活性を発揮している.GIPは,食物摂取後,食物中に含まれる脂肪や糖質により分泌が刺激され,速やかに血中濃度が上昇し,食後30~60分でピークとなる.こうして分泌された活性型GIPが膵β細胞においてGタンパク共役受容体であるGIP受容体に作用し,細胞内のcAMP濃度を増加させ,細胞内の種々の調節タンパクをリン酸化させインスリン放出を促進させる.しかしながら,糖尿病患者では,GIPにおけるインスリン分泌促進作用が減弱していることが報告されており,現在このGIPシグナルを増強することを目的としたインスリン分泌促進薬は存在しない.GIP受容体は,膵β細胞以外にもさまざまな組織に発現しており,脂肪細胞,胃,十二指腸,空腸,副腎,下垂体,脳などでその発現が報告されている.膵β細胞以外でのGIPの働きに関してもさまざまな報告があり,特にGIP受容体ノックアウトマウスを用いた検討では,GIPシグナルを遮断すると,高脂肪食下にマウスを飼育しても脂肪の蓄積や体重増加が認められず,その結果インスリン抵抗性もなかったことが報告されている1).また,GIP受容体アンタゴニストである,(Proline 3)GIPを投与し,高脂肪食を負荷したマウスにおいても同様の結果であり,体重増加が抑制されたとの報告がある2).GLP -1は,下部小腸に存在するL細胞において産生される.L細胞においてグルカゴン遺伝子が転写・翻訳を受けると前駆タンパク質であるプログルカゴンが生成される.さらにタンパク切断酵素であるprohormone convertase 1(PC1)により31個のアミノ酸からなるGLP -1(7-37),あるいはC端がアミド化され,30個のアミノ酸からなるGLP-1(7 -36)amideが生成される.GLP-1(7 -37)とGLP -1(7 -36)amideは,ほぼ同じ生理作用を有する活性型GLP -1であり,インスリン分泌促進作用をもつ.GLP-1は,食事の刺激で分泌された後,GIPと同様に膵β細胞膜上に存在するGタンパク共役受容体であるGLP -1受容体に作用し,細胞内のcAMP濃度を増加させることでインスリンの分泌を促進させる.GLP-1のインスリン分泌促進作用はグルコース濃度依存性であり,血糖値が55mg/dLを下回るとこの作用はなくなる.また,GLP-1受容体は膵β細胞以外にも比較的広範囲に発現しており,GLP-1には膵β細胞以外でもさまざまな作用があることが報告されている.GLP -1受容体は中枢神経系にも発現しているが,Turtonらの報告では,GLP -1をラットの脳室内に投与したところ,食欲抑制作用が認められ,GLP -1のアンタゴニスト投与下では認められなかったことより,GLP-1の中枢神経における直接作用として食欲抑制作用があることが示された3).また,GLP -1を末梢から投与した場合も食欲抑制,体重減少が認められる.GLP-1の末梢投与における食欲抑制,体重減少の機序には不明な点が多いが,末梢から投与されたGLP -1がなんらかの方法で中枢に到達しているという可能性と,迷走神経の求心線維を介して脳に影響を与えている可能性が考えられている.しかしながら,GLP-1受容体ノックアウトマウスを用いた検討では,GLP-1の生理的なシグナルを欠損させても,野生型マウスと食事摂取量に差がなく,体重減少が生じなかったことから,GLP -1の食欲抑制,体重減少作用は高濃度のGLP -1による薬理的な作用であるかもしれない.ⅢGLP-1受容体作動薬上述のとおり活性型GLP -1にはインスリン分泌促進作用が認められることや,食欲抑制作用が認められることから,抗糖尿病薬としてだけではなく,抗肥満薬としても期待される.しかしながらこれらの作用を有する活性化GLP -1は,ペプチド分解酵素であるDPPⅣにより速やかに分解される(DPPⅣは,ペプチドのN末端側から2つのアミノ酸を切断するが,この反応はN末端から2つ目のアミノ酸がプロリンもしくはアラニンであるときに生じる)ため血中での半減期は数分と短い.したがって活性型GLP-1そのものを治療に用いる場合,持続注射が必要となる.そこで,DPPⅣによって分解されにくいGLP-1受容体作動薬が求められ,エキセナチドやCurrent Therapy 2012 Vol.30 No.656179